今年1年、どんな本を読みましたか? “本の専門家”たちが選んだそれぞれの“2018年の3冊”を紹介する。
【小川たまか(ライター)が選んだ3冊】
『徴産制』田中兆子(新潮社)
女性人口が激減し、男性も出産することになった日本。18~30歳の全員が性転換を義務付けられた社会で「産役男」たちはルッキズム、不妊、性暴力などの問題に直面する。彼らの目を通して現代社会の女性蔑視が描写されるが、読後感は爽やか。
『地球星人』村田沙耶香(新潮社)
『さよならミニスカート』牧野あおい(集英社)
【新井見枝香(三省堂書店神保町本店勤務)が選んだ3冊】
『スープ・レッスン』有賀薫(プレジデント社)
スープ作家・有賀薫さんの、素材のおいしさを引き出す最高のレシピ集。気合を入れて作るのではなく、拍子抜けするほど簡単で、物足りないのではないかと心配になるほど。しかし、私がにんじんやキャベツだったら、どうかこのレシピで食べてほしい。
『ののはな通信』三浦しをん(KADOKAWA)
『ふたりぐらし』桜木紫乃(新潮社)
【温水ゆかり(ライター)が選んだ3冊】
『贋作』ドミニク・スミス 訳・茂木健(東京創元社)
場所も時間も三層。17世紀オランダ、1950年代NY、2000年シドニーの三都市物語であり、17世紀名画を所有する弁護士と苦学生エリーの出会いと別れ、痛くて甘美な再会譚でも。結局、本や絵画や映画の話が好きなのだなあと再確認(下の2冊もそう)。
『祝祭の日々 私の映画アトランダム』高崎俊夫(国書刊行会)
『モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語』内田洋子(方丈社)
【佐久間文子(文芸ジャーナリスト)が選んだ3冊】
『たそがれてゆく子さん』伊藤比呂美(中央公論新社)
アメリカで暮らす著者が、年の離れた夫をひとりで介護して、その死を看取る。暮らしを圧迫していた介護から解放されたあとで、これほど深い孤独を感じるとは。詩人は、感傷に陥らず、目をそらさず、うつろう自分の感情を表す言葉を見つけていく。
『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』新井紀子(東洋経済新報社)
『彼女は頭が悪いから』姫野カオルコ(文藝春秋)
【瀧井朝世(ライター)が選んだ3冊】
『青少年のための小説入門』久保寺健彦(集英社)
中学生の男の子と読み書きが不得手なヤンキー青年が無謀にも小説家を目指す。実際的なトレーニング法や二人の話し合いが丁寧に描かれ、リアルな成長物語として楽しめる。読むこと書くことの楽しさを教えてくれ、まさに「小説入門」となる長篇。
『ベルリンは晴れているか』深緑野分(筑摩書房)
『ののはな通信』三浦しをん(KADOKAWA)
※女性セブン2019年1月3・10日号