西洋史を舞台とするこういう大型企画を、日本の出版界はなりたたせた。出版不況がささやかれる今日だけに、この偉業を多としたい。塩野七生が書きあげた『ローマ人の物語』もそうだが、ほんとうに頭が下る。
さて、『小説フランス革命』で、私はとりわけエベールの人となりに、興味をいだかされた。階級闘争史観では、ロベスピエールより過激な最左派だと位置づけられる。私も、ずっとそういう人物だとうけとめてきた。
だが、彼には人民の下司っぽい俗情をあおる扇動家としての一面がある。私には、佐藤の引用する彼の機関紙をつうじ、そのことがよくわかった。平成も終盤をむかえた今、エベールのことはトランプの祖型として見るようになっている。フランス革命には、まだまだ学ぶべきところがあると、痛感する。
※週刊ポスト2019年1月1・4日号