この他に、自分の行為が原因で作為義務が生じたのに、それをしないために被害が生じたような場合にも、不作為により、当該犯罪を行なったと同様であるとして罪に問われる場合があります(不真正不作為犯)。
そして、直接手を出さなくても、犯人を煽り、行為に及ばせたときには共犯となります。例えば、鍋への顔面突っ込みは暴行ですが、周りで煽ってやらせると共犯になりかねません。しかし、逆にこうした無茶をする人物が強い立場であり、逆らえない場合に、見ていただけの同席者が共犯にはなりません。さらに止めるべき作為義務もあるとはいえず、犯罪を犯したことにはならないでしょう。
ただ、安心はできません。犯罪は根拠法令が必要で、厳密な証拠も求められ、容易に認められませんが、民事の不法行為として損害賠償を命じられることもあります。一気飲みを無理強いすると不法行為になり、一緒にはやし立てた全員の共同不法行為が成立します。被害者が身体を壊せば、賠償を命じられます。楽しいお正月です、どうか羽目を外さぬように。
【弁護士プロフィール】竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2019年1月11日号