芸能

柳亭こみちの『富久』 女性演者ならではの演出が随所に光る

柳亭こみちの魅力を解説

 音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。広瀬氏の週刊ポスト連載「落語の目利き」より、昨年、真打ちに昇進した柳亭こみちの、女性演者らしい演出が光る『富久』についてお届けする。

 * * *
 面白い偶然があるものだ。前回、橘家圓太郎の『富久』について書いたが、その「圓太郎ばなし」の会からちょうど1週間後、今度は圓太郎から教わった『富久』を柳亭こみちが演るのを観た。

 神保町らくごカフェでの火曜恒例若手二人会「らくごカフェに火曜会」、11月20日は三遊亭天どんと柳亭こみちが出演した。まずこみちが演じたのは『附子』。桂枝太郎が狂言を落語に作り替えたもので、旦那が水飴の入った瓶のことを「あの中身は附子という毒だから舐めたりするな」と注意して出かけた留守に、定吉と権助が中身を全部舐めてしまう。軽妙な味わいの楽しい小品だ。

 天どんが『小間物屋政談』と『イタチの留吉』(三遊亭圓丈作)を披露した後、トリのこみちが演じたのが『富久』。久蔵が丸屋の旦那から「鶴の八八八」の札を買うことから圓太郎と同じ型だと気づいたのだが、こみち独自の工夫が随所に加えられている。まず、冒頭で久蔵に声を掛けるのは丸屋の旦那ではなく芸者の「おたま」。彼女が「丸屋の旦那から富くじを買ってきたところなの」と言うのを聞いて久蔵も買いに行く、という設定だ。

 日本橋石町が火事と聞いて駆けつけた久蔵が箪笥を担いだりするところは圓太郎のままだが、お内儀さんが久蔵に「心配してたんだよ、よく来たね」と声を掛けるのはこみちが加えた演出。浅草三間町が火事になって番頭と一緒に出掛けた久蔵が店に戻ってきたときも、お内儀さんが久蔵に優しい言葉を掛ける。芸者やお内儀を出すのは女性演者としての個性を活かした効果的な演出だ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

映画『アンダンテ~稲の旋律~』の完成披露試写会に出席した秋本(写真は2009年。Aflo)
秋本奈緒美、15才年下夫と別居も「すごく仲よくやっています」 夫は「もうわざわざ一緒に住むことはないかも」
女性セブン
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
日本初となる薬局で買える大正製薬の内臓脂肪減少薬「アライ」
日本上陸の内臓脂肪減少薬「アライ」 脂肪分解酵素の働きを抑制、摂取した脂肪の約25%が体内に吸収されず、代わりに体内の脂肪を消費
週刊ポスト
専修大サッカー部を辞任していた源平監督(アフロスポーツ)
《「障害者かと思った」と暴言か》専修大サッカー部監督がパワハラ・経理不正疑惑で辞任していた 大学は「警察に相談している」と回答
NEWSポストセブン
日本人パートナーがフランスの有名雑誌『Le Point』で悲痛な告白(写真/アフロ)
【300億円の財産はどうなるのか】アラン・ドロンのお家騒動「子供たちが日本人パートナーを告発」「子供たちは“仲間割れ”」のカオス状態 仏国民は高い関心
女性セブン
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
女性セブン
日本製鉄によるUSスチールの買収計画
【日本製鉄のUSスチール買収問題】バイデンもトランプも否定的だが「選挙中の発言に一喜一憂すべきではない」元経産官僚が読み解く
NEWSポストセブン
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
NEWSポストセブン
バドミントンの大会に出場されていた悠仁さま(写真/宮内庁提供)
《部活動に奮闘》悠仁さま、高校のバドミントン大会にご出場 黒ジャージー、黒スニーカーのスポーティーなお姿
女性セブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
今年1月から番組に復帰した神田正輝(事務所SNS より)
「本人が絶対話さない病状」激やせ復帰の神田正輝、『旅サラダ』番組存続の今後とスタッフが驚愕した“神田の変化”
NEWSポストセブン
わいせつな行為をしたとして罪に問われた牛見豊被告
《恐怖の第二診察室》心の病を抱える女性の局部に繰り返し異物を挿入、弄び続けたわいせつ精神科医のトンデモ言い分 【横浜地裁で初公判】
NEWSポストセブン