拿捕事件を受け、トランプ大統領はアルゼンチンでのプーチン大統領との首脳会談をキャンセルした。米国の中間選挙で下院を制した民主党は、ロシアへの新たな大型経済制裁を準備中だ。米議会は超党派で親露派・トランプ大統領の対露制裁緩和権限を奪い、ロシアを封じ込めている。
米露関係がますます悪化する中、プーチン大統領は返還後の2島に米軍基地を設置しない確約を要求している。しかし、歯舞、色丹を日米安保条約の除外地域とすれば、日米地位協定の改定が必要になり、米政府や国防総省は対日不信を強めよう。尖閣には適用し、北方領土には適用しないという都合のいい構想を米側は受け入れないだろう。
日米同盟を危惧するロシアは交渉で、地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備中止や、クリミア併合に伴う日本政府の対露制裁撤廃を要求するかもしれない。
「日米離間」は、ソ連時代からロシアの常套手段だ。プーチン大統領が日米同盟弱体化を狙う要求を貫くなら、安倍首相は交渉を打ち切り、「4島返還」の原則に戻るべきだろう。
ロシアが秋以降、ウクライナだけでなく、世界的に冒険主義路線を取っていることも、交渉のタイミングとしては良くない。ロシアは駐留するシリアでも、11月から反政府勢力支配地区への空爆を再開した。
10月以降、内戦の続くリビアやイエメン、中央アフリカにも数十人から100人の義勇軍や軍事顧問団を派遣し、一方の側を支援している。