国内

断酒は1~2年で終わりではない、死ぬまで酒を断つことが必要

都内で365日行われている『東京断酒新生会』による断酒例会

 一度なってしまったら、完治することがないのが、アルコール依存症だ。アルコール依存症の専門医で、『さくらの木クリニック秋葉原』院長の倉持穣さんはこう語る。

「安定剤の1つである渇望抑制剤や、お酒を飲むと気持ちが悪くなる抗酒薬はありますが、完治するものではありません。一度、依存症になると現代医学では治すことができない。治療の原則は断酒の開始と継続しかありません」(倉持さん、以下同)

 断酒は1人でできるものではなく、医師の定期的なカウンセリングや入院治療が必要となる。

「患者さんには、依存症とはどんな病気なのか、なぜお酒を飲むようになったのかなど、認知行動療法を行います。そこから断酒会への参加を進めます。断酒会は、同じようにアルコール依存症になった仲間同士で自分のことをひたすら話す場所。仲間の前で自分の弱い部分をさらけ出すことで、お酒に依存していたのが、仲間を頼りにするようになりお互い助け合っていくようになります。そうすると、精神的にも安定し、お酒をやめられるようになる。そして、自分は周りに支えられていると気づけるようになる。お酒をやめることで、人間的に成長できたと言う人は多いんですよ」

 ただし、断酒は1~2年続ければ終わりというものではない。死ぬまで、永続的に酒を断つことが必要だ。それには継続的に断酒会に参加する必要がある。10年、20年にわたる参加者は当たり前。30年以上参加している人も多い。

 アルコール依存症患者を支援する自助グループ『全日本断酒連盟』の理事で、自身も長年、アルコール依存症で苦しんだ経験のある宮田由美子さんは、毎日、ビールなどを2ダース近く飲んでいた。自身の断酒経験を次のように振り返る。

「私が断酒に踏み切ったのは30代後半。2人の子供のために、やめなくてはと断酒会に参加しました。最初こそ抵抗感はありましたが、次第に通っていくうちに、同じ苦しみを味わった仲間同士だからこそわかり合えることがありました。この人たちがいるから、ひとりじゃないと思えたのです。37才で断酒して以来、69才になる現在まで一滴も飲んでいません。

 一方で、何十年断酒していても、1回飲んだだけで、元どおりの依存症になってしまう人もいます。それを防ぐためにも、断酒会に通って、依存症であることを自覚し続けることが必要なのです」

 依存症が治ることはなくても、生き方は変えられる。お酒がない生活に慣れればやり直しはきく。死を目の前にしても飲み続けるか、人生を再スタートさせるのか…それを選ぶのは自分自身なのだ。

※女性セブン2019年1月31日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

降谷健志の不倫離婚から1年半
《降谷健志の不倫離婚から1年半の現在》MEGUMIが「古谷姓」を名乗り続ける理由、「役者の仕事が無く悩んでいた時期に…」グラドルからブルーリボン女優への転身
NEWSポストセブン
警視庁がオンラインカジノ店から押収したパソコンなど(時事通信フォト)
《従業員や客ら12人現行犯逮捕》摘発された店舗型オンカジ かつての利用者が語った「店舗型であれば”安心”だと思った」理由とは?
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン
看護師不足が叫ばれている(イメージ)
深刻化する“若手医師の外科離れ”で加速する「医療崩壊」の現実 「がん手術が半年待ち」「今までは助かっていた命も助からなくなる」
NEWSポストセブン
(イメージ、GFdays/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」が見た恐怖事例》「1億5000万円を食い物に」地主の息子がガールズバーで盛られた「睡眠薬入りカクテル」
NEWSポストセブン
キール・スターマー首相に声を荒げたイーロン・マスク氏(時事通信フォト)
《英国で社会問題化》疑似恋愛で身体を支配、推定70人以上の男が虐待…少女への組織的性犯罪“グルーミング・ギャング”が野放しにされてきたワケ「人種間の緊張を避けたいと捜査に及び腰に」
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
【新宿タワマン殺人】和久井被告(52)「バイアグラと催涙スプレーを用意していた…」キャバクラ店経営の被害女性をメッタ刺しにした“悪質な復讐心”【求刑懲役17年】
NEWSポストセブン
女優・遠野なぎこの自宅マンションから身元不明の遺体が見つかってから1週間が経った(右・ブログより)
《上の部屋からロープが垂れ下がり…》遠野なぎこ、マンション住民が証言「近日中に特殊清掃が入る」遺体発見現場のポストは“パンパン”のまま 1週間経つも身元が発表されない理由
NEWSポストセブン
幼少の頃から、愛子さまにとって「世界平和」は身近で壮大な願い(2025年6月、沖縄県・那覇市。撮影/JMPA)
《愛子さまが11月にご訪問》ラオスでの日本人男性による児童買春について現地日本大使館が厳しく警告「日本警察は積極的な事件化に努めている」 
女性セブン