「t-PA治療の入院日数は2週間程度ですが、カテーテルを用いた治療では4週間程度と長引く傾向があります。高額療養費制度は『ひと月ごと』に費用を計算するので、入院が月をまたぐと、ひと月目は治療+入院費、ふた月目は入院費のみとなり、それぞれ自己負担上限額の約10万円がかかることになる。つまり、t-PA治療に比べ、自己負担額が2倍になってしまうのです」
これだけでも10万円程度の差がつくが、さらなる問題は“退院後”に潜んでいる。脳梗塞の闘病は退院したら終わりではなく、半身麻痺や言語障害などの後遺症と付き合っていくことになる。
「退院後は、理学療法士や作業療法士がいる病院に通ってリハビリを受けることになります。リハビリの効果が現われる期間は人によって異なり、病院では最大6か月までリハビリを受けることができます。週3回、1日2時間のリハビリを受けた場合、月額約4万3000円(3割負担額)となり、6か月続ければ約26万円の負担がかかる。
それでも回復しない場合は、介護保険を使って介護老人保健施設でリハビリを続けたり、民間のリハビリ施設に通うことになります。ただし、介護施設では回復に向けた本格的なリハビリが受けられないケースも多く、民間では月額10万円以上の費用がかかる施設も珍しくない。1年間続けたとしても100万円以上の差が出てしまいます」(室井氏)
当然、リハビリを受ける期間は安定的な収入の確保が難しくなることも予想される。
医療関係者の間で、「脳梗塞のリハビリは退院してからが本番」といわれているのは、回復までのプロセスに加えて、治療費の出費と捻出という問題も大きいからだ。
※週刊ポスト2019年2月15・22日号