フィリピンで公開された世界市場向けの新型ハイエース(TOYOTA)
トヨタは2017年の東京モーターショーに次世代商用バンのコンセプトカー「LCVコンセプト」を出品している。プロポーションは現行ハイエースと異なり、普通のミニバンと同様、ボンネットつきの1.5ボックススタイル。もちろん前面衝突安全性能を強化するためで、世界の商用車のトレンドに沿ったものだ。
性能面では実に正しい進化と言えるが、世の中は正しいものが人々を魅了するとは限らない。もし、遠くない未来に登場するであろう次期ハイエースがボンネット型になったとき、今日のような“愛されキャラ”でいられるかどうかは実に興味深いところ。
歴代ハイエースは前席の前方ではなく下にエンジンが搭載される、キャブオーバーと呼ばれるパッケージであった。前席を前に寄せることができるため、ボディをいたずらに長くしなくても室内を広大にすることができる。
1965年にプリンス自動車(後に日産自動車に吸収合併)が世に送り出した「ホーミー」を先陣に、一気にバリエーションが増えた。今日、ミニバンは前輪駆動が主流だが、かつてはハイルーフミニバンと言えばすべてキャブオーバータイプだったのだ。
衝突安全基準の強化にともない、ボンネットなしのキャブオーバーモデルは次々に姿を消した。現行ハイエースは技術陣の涙モノの努力によって衝突安全基準をクリアした、キャブオーバーミニバンの生き残りの1台。そのこと自体がハイエースをオンリーワンにしていることは確かだ。
「トヨタは以前、『グランドハイエース』という名でボンネットタイプのミニバンを発売したことがあります。日産『エルグランド』への対抗馬として登場した『グランビア』の兄弟モデルでした。
グランビアがパッとしなかったため、強固なブランドであったハイエースの名前をつけたのでしょうが、ハイエースワゴンのお客様は見向きもしませんでした」(前出の改装ファクトリー関係者)
衝突安全強化のためにもボンネットバン化は必須。しかし、ハイエースの顧客をつなぎとめられるかどうかは未知数。トヨタにとっても次期ハイエース作りが悩ましさ極まるものであることは想像に難くないが、それでも商用バンづくりの熱意では右に出る者のないトヨタのこと、不安を吹き飛ばす魅力的なモデルとなっての登場を期待したいところだ。