両者は似て非なるもので、まず前者は、1977年まで使っていた競技用シューズを、洗練されたスタイルを求めてスポーティなファッションブランドシューズとして2002年に復刻。後者は1990年代半ばまで使っていた競技用シューズを踏襲し、ストリートファッションの要素も取り入れたスポーツライフスタイルブランドとして2015年に復刻した、というのがアシックス側の位置づけだ。
うち、「オニツカタイガー」は東南アジアを中心に海外でかなりの人気となり、訪日外国人もよく買っている。そのためか、今年1月の組織改編では、この「オニツカタイガー」のシューズやウエアだけを切り出した部門を新設した。
今年の売り上げ計画でも、「オニツカタイガー」は前年比の伸長率で、ほかの部門に比べて最大となる見込みだ。創業者の鬼塚喜八郎(故人)の名を冠したこのブランドは歴史が古いだけに、素材やデザイン、色使いやロゴマークなどのレトロ感もウケているようだ。
以前、廣田社長はこう語っていたことがある。
「『オニツカタイガー』をしっかり育て、よりハイエンドなラグジュアリーブランドにしていきたいと思っています。そして、僕らが一番大切にするのはランニングシューズ分野。ランニングが一番強いジャンルでもありますし、当社の技術が一番発揮できるところでもある。ここでナンバーワンになるんだという、そこは絶対にブラさないようにしようと。
そのうえで、僕らは“スポーツスタイル”と呼んでいますが、普段履きのスニーカーも非常にニーズが高まってきていて、ファッション性がすごく重視されるので、この分野もしっかり確立させていきたいと思います」
明の「オニツカタイガー」に対し、現状、暗になっている「アシックスタイガー」は、欧州とオセアニア地域で特に低調だ。競技用は従来の「アシックス」、「アシックスタイガー」はスポーツカジュアル、「オニツカタイガー」が高級カジュアルといった位置づけだったが、その中で、価格競争も激しく競合商品も多い「アシックスタイガー」のジャンルは、アシックスがやや弱い、ファッション性も重視されるだけに、「アシックスタイガー」浮上に向けてのテコ入れは簡単ではない。
ともあれ、アシックスはシューズの売り上げが8割以上を占め、売り上げに占める海外比率も75%と高く、中核のランニングシューズで海外の強者メーカーに勝ち抜いていかなければ、存在価値を失ってしまう。足元の失速、劣勢をどう跳ね返していくか──。“助走期間”は終わって、社長2年目に入る廣田氏の腕が試されることになる。