篠山市の玄関駅でもある篠山口駅。丹波篠山市への改称を機に、駅名改称の機運も盛り上がる可能性がある
丹波市を丹波篠山と誤認する観光客が増加し、篠山市は観光客を奪われた。そのほかにも、篠山市の名産品でもあった“丹波の黒豆”が丹波市の名産品と誤って紹介されるケースが続出した。
篠山市が被った経済的損失は測りしれない。こうした事態を受け、篠山市は丹波篠山市への再改称の検討を開始。昨年11月には住民投票を実施し、賛成多数で篠山市から丹波篠山市へ改称することを決めた。こうして、今年5月1日に新市名「丹波篠山市」へと切り替わる。
「本来なら新年度が始まる4月1日に丹波篠山市へ改称することが一般的ですが、今年は5月1日に元号が切り替わります。元号の切り替えでシステムを改修しなければなりませんから、4月に市名を改称してしまうと1か月で2度もシステム改修をすることになります。現在、市名変更にかかる費用は、約3000万円の予算が計上されていますが、改元と同時にシステム改修をすることで費用を3000万円より安く済ませられる公算です。そうした手間や費用の圧縮を踏まえて、市名改称日を5月1日に決めました」(同)
丹波篠山市に改称することで変更されるのは、市が管理する住民基本台帳などのシステムだけにとどまる。駅名や高速道路のインターチェンジ名などは変更されない。
しかし、市名もさることながら、駅名や高速道路のインターチェンジ名は市の顔ともなる存在。特に、篠山市の玄関駅としての役割を担ってきた篠山口駅は、旧篠山町内にはなく旧丹南町に立地していた。ゆえに駅名は篠山駅ではなく、篠山“口”駅としたわけだが、丹南町にありながら篠山口駅とした背景には、城下町・篠山のブランド効果を期待したものだろう。
篠山口駅がある丹南町は、合併して篠山市の一部になった。それだけに、篠山口駅を丹波篠山駅に改称しても問題は生じない。
「駅名には大きな訴求効果があります。駅名を“丹波篠山”に改称する声は、市制施行10周年のときにも商工会から出ました。当時、駅名改修費用は約8000万円と試算されて、断念しています。今回の丹波篠山市への改称でも駅名を変更しようという声は出ています。しかし、当時と比べてシステムが複雑化しているために、費用は8000万円より高くなる可能性があります。駅名改称の検討はあくまでも市の一部内の話であり、現段階でJR西日本に対して働きかけはしていません。仮に駅名を改称することになっても、費用面も含め慎重に議論しなければなりません。まだ、時間がかかる話です」(同)
平成の市町村合併では、新たな市がたくさん誕生した。平成の市町村合併で誕生した新市には、市名と玄関口となる駅名とが異なるケースも散見される。
地域の一体性や住民のアイデンティティーにも影響を与える市名と駅名。市名・駅名不一致問題は、時に地域を二分する争いに発展する。それだけに、簡単に受け流せない問題でもある。
平成が間もなく終わりを迎える中、いまだ平成の市町村合併の余波は続いている。