全体的にネスレが色濃く、ざっくりと書けばスピンオフ自体がコマーシャルだと捉えることもできる。しかし、演出、CM含めて世界観が映画と同じ。よって、物語から醒めることはない。テンションを落とさずに鑑賞を続けられた。
広告がうるさくないので『カメ止め!』のブランドを下げることはない。「スピンオフを作ってくれたありがたい企業」とネスレのイメージも上昇。“SUPREME × NIKE”のような、稀に見るナイスなコラボ案件だったといえる。
構造は変わらないが、主人公はバトンタッチ。前作ではドラマ監督だった父が主役だったが、今作は娘に。人気キャラクター日暮真央がメインとなったことにより物語に恋愛要素も追加。作品はより一層コミカルさを増していた。
話は少し逸れるが『カメ止め!』は、大泉洋の出世作となったバラエティ番組『水曜どうでしょう』に近い。両作品ともに1台のカメラを回すことから生まれた。小さな規模から大きな評価を生み出した点も同じだ。作品づくりの内側が描かれており、そこに奮闘するチームプレイを笑いに変える。
なによりも「自分は作品のサポーターです!」と公に公表したくなる魅力を持つ。『カメ止め!』のロゴが入ったTシャツ、『水曜どうでしょう』のロゴが入ったステッカー、ともに大ヒット。鑑賞者が制作陣とノリを共有したい! なんてムードがムンムン漂う。両作品には演出では生み出せないマジックがある。
事務所のモニタで再び『カメ止め!』続編の魅力に浸れる喜びったらないわけで。その素晴らしさを噛み締める。そして、劇場映画と今回のスピンオフドラマ、両作品を構成する3大要素に気がついた。
【1】ピタゴラスイッチのように爽快なトリック
【2】家族、仲間といった人情噺
【3】それぞれの仕事論
コレみんなが好きなやつじゃん! そりゃ、バランス良く構成すればグッとくるに決まっているわけで(それが難儀なのだけども……)。
ともかく、地道に邁進した人が正しく評価されることは美しい。『ハリウッド大作戦!』を観て、そう思った。こう書けば怒られるかも知れないが、嫌ってほどに、スピンオフ作品が作られた『踊る大捜査線』ぐらい展開して欲しいもの。僕はなるべく長時間『カメラを止めるな!』に浸っていたいんだ。
「もっと『カメ止め!』ワールドを観たい!」とファンの熱意から誕生した『ハリウッド大作戦!』。4月30日までネスレ公式サイトで無料公開中だ。
●ヨシムラヒロム/1986年生まれ、東京出身。武蔵野美術大学基礎デザイン学科卒業。イラストレーター、コラムニスト、中野区観光大使。五反田のコワーキングスペースpaoで週1度開かれるイベント「微学校」の校長としても活動中。テレビっ子として育ち、ネットテレビっ子に成長した。著書に『美大生図鑑』(飛鳥新社)