芸能

高倉健さんの偉業、誰よりも長く一線にいたその背景

「健さん」はなぜスターで居続けられたのか(時事通信フォト)

 映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、常にスターだった高倉健さんが、その裏側で考え抜いていてこだわりについてお届けする。

 * * *
 これから数週ほど、すでに亡くなられてしまった、かつての名優たちの演技論について、過去の著作・インタビューなどから掘り下げてみたい。

 まず今回は高倉健。彼の場合、あくまでスターとして評価されてきた面が多分にあり、「いつも高倉健として映っている。スターだからそれでいい」というように扱われることが多い。そのため、役者としての技量を語られにくくなりがちだ。

 が、本当に「何もしない」のであれば、数々の名作映画であれだけ味のあるたたずまいを見せるのは無理だ。実はその裏側には、考え抜かれたこだわりがあった。

『高倉健インタヴューズ』(小学館文庫)での野地秩嘉のインタビューで、高倉健はこのようなエピソードを披露している。

 一九九四年の映画『四十七人の刺客』に主演した時のこと。高倉は市川崑監督に「映画監督にとっていちばん大切なことは何ですか」と質問している。それに対し、市川はこう答えたという。「自分自身が長く見たいシーンをバッサリ切る」「監督は自分が撮ったシーンはどれも大切だから切りたくない。しかし、自分の気に入ったシーンばかりを長々と映したら、観客に自己陶酔を見せつけることになる」

 その上で、高倉は自身の演技について次のように語っている。

「映画のセリフは日常に使う言葉とはまったく別のものです。自分が気に入ってしゃべるのでなく、脚本家と監督に言われて演じているだけ。イヤだなと思ってもしゃべらなきゃならない言葉がたくさんあります。また、いいセリフだなと思っても、しゃべる時は注意が要る。市川監督の言葉じゃないですが、観客は自己陶酔なんか見たくないですよ」

「場面がいいからセリフが印象に残る。いいセリフとはいいシーンで使われるものなんじゃないでしょうか」

関連キーワード

関連記事

トピックス

和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
松竹芸能所属時のよゐこ宣材写真(事務所HPより)
《「よゐこ」の現在》濱口優は独立後『ノンストップ!』レギュラー終了でYouTubeにシフト…事務所残留の有野晋哉は地上波で新番組スタート
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
犯人の顔はなぜ危険人物に見えるのか(写真提供/イメージマート)
元刑事が語る“被疑者の顔” 「殺人事件を起こした犯人は”独特の目“をしているからすぐにわかる」その顔つきが変わる瞬間
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
降谷健志の不倫離婚から1年半
《降谷健志の不倫離婚から1年半の現在》MEGUMIが「古谷姓」を名乗り続ける理由、「役者の仕事が無く悩んでいた時期に…」グラドルからブルーリボン女優への転身
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン
(イメージ、GFdays/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」が見た恐怖事例》「1億5000万円を食い物に」地主の息子がガールズバーで盛られた「睡眠薬入りカクテル」
NEWSポストセブン