動力性能と並ぶもうひとつの特徴はクルマの新奇性である。モデル3、モデルYはステアリングやダッシュボード上にメーターがなく、スイッチ類も方向指示器などごく一部を除き、設けられていない。
スピードをはじめとする情報はすべてセンターコンソール上部に設置されたタブレット型の15インチ液晶ディスプレイに表示される。エアコン、オーディオ、ナビゲーション、運転支援システムなど車両設定や装備品の操作の大半をタッチパネルで行うのだ。
現時点ではテストドライブが可能なモデル3がまだ日本にやってきていないため、あくまで静止状態からの推察だが、情報表示やクルマの操作を液晶で行うのは、いささかやりすぎの感がある。とくにスピードをはじめ車両情報を確認するには視線の移動量が大きすぎ、わき見運転になるのではないかと思ったほどだ。
おそらく既存の自動車メーカーの開発者も、同じように思うことだろう。が、テスラにはそういうこだわりは希薄だ。法規的に問題がなければ、何でもパネルで操作するというIT機器的な発想を、良くも悪くも遠慮なくクルマに盛り込んでくる。
今までのクルマにないモデル3の“新味”はそれだけではない。同じ全長のエンジン車に比べて断然広い室内空間を持っていたり、熱線吸収ガラスを使用したグラストップが全車標準装備であったり。また、充電時はプラグの手元のタッチ式スイッチを触ればクルマの急速充電口が電動でシュッと開いたりするといった演出も。
この動力性能の過剰性と、今までのクルマの常識からおよそかけ離れた独特の雰囲気作りが生むクールさは、少なくともプレミアムセグメントユーザーに対してはそれなりの吸引力を発揮するであろう。とくにターゲットとなりそうなのは、もともとクルマに乗るのは好きだが既存の高級車には飽きがきているという複数所有の高所得者層。テスラの根拠地カリフォルニアでも、ちょうどそういう売れ方をしている。
そんなテスラの逆風になりそうなのは、EV特有の不便さだ。