日本で急速充電環境が整っていないのがテスラの悩み

日本で急速充電環境が整っていないのがテスラの悩み

 テスラ車は航続距離が非常に長いのが特徴で、日本で販売が予定されている最も低スペックのモデル3「ミッドレンジ」でも、計測条件の厳しいアメリカの基準で260マイル(418km)も走る。これは今年発売された日産自動車のEV「リーフ」の航続距離延長型「e+」の239マイル(384km)を上回る数値だ。日本、欧州で使われ始めた新燃費計測法WLTCならもっと大きな数値になるだろう。長距離型「ロングレンジ」は航続にさらに余裕があり、310マイル(498km)だ。

 そんなモデル3も、ひとたびバッテリーの電力残が少なくなれば、他のEVと同じく充電に手間がかかることになる。超急速充電が可能な独自規格の充電器「テスラチャージャー」は数が少なく、日本の急速充電規格であるチャデモ準拠の充電器を、アタッチメントを介して使うシーンが多くなるだろう。

 日本の急速充電器は全般的にスピードが遅く、高出力タイプでも出力44kW程度。充電ロスを1割と見立てた場合、泣いても笑っても30分の充電量は最大でも20kWh程度にとどまるのだ。出力の高い次世代充電器の配備は徐々に始まっているが、テスラのような大容量バッテリー車に対してはそれでも性能は十分ではない。

 日本の場合、電力会社の規制の影響で高出力チャージャーの運用コストが従来の急速充電器に比べて格段に高くなるのもネックで、設置のペースは従来の急速充電器より格段に遅くなる公算が高い。現在、EV普及のネックとなっている長距離ドライブ時の利便性の低さは、モデル3やモデルYも他のEVと変わるところはないのだ。

 また、日本は世界のなかでも都市部への人口集中度が高く、一軒家の比率が低いため、自宅で充電できないというユーザーが多いのも、販売面では逆風となる。都市部では複数所有の割合も低く、「何台かあるうちの1台はEVでいい」というカリフォルニアのような売れ方もあまり期待できない。

 それでも販売が停滞し、販売されるクルマもコンサバティブなものばかりになりつつある日本の自動車マーケットにおいて、コンパクトテスラの登場は一服のカンフル剤になることだろう。アメリカのEV販売ではまさしく“一人勝ち”だったテスラが日本で旋風を巻き起こせるかどうか、大いに注目したいところだ。

●撮影/井元康一郎(テスラ3)

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