まずは一番肝心の商品力だが、この点については大いに期待が持てる。テスラ車は世界の各市場において高級車、いわゆるプレミアムセグメントに区分されているが、そのジャンルで顧客からとりわけ強く要求されるのは性能と革新性だ。
EVは一般に、石油依存からの脱却を可能にするエコカーと考えられている。もちろんテスラが金看板にしているのも脱石油だ。が、創業当時からテスラの経営を仕切ってきたイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)は一貫して、EVの特性をめいっぱい付加価値に生かすクルマづくりを志向してきた。加速力の良さを追求する場合、EVのほうがエンジン車よりコスト安ですむというものだ。
市販車第1号としてオープンスポーツ「ロードスター」を売価10万ドルで発売した頃は、宣伝のために半分冗談で作ったに過ぎず、大きなムーブメントになることはないと多くの自動車業界関係者がみていた。
ところが、大型セダンのモデルSで静止状態から60mph(96km/h)まで加速させるのに4秒もかからないというパフォーマンスを実現させた頃から風向きが変わり始めた。
現在、EV熱がことさら高まっているジャンルは高級車、スポーツカーだ。各国の環境規制をクリアするにはEVを作ることがマストということはもちろんあるが、それ以上に、EVをやらなければ性能でテスラに負けるだけだということが市販車で示されてしまったことが大きい。現在、モデルSで最も速いモデルは0-60mph加速を2.3秒でこなす。これに対抗可能なエンジン車は、何十万ドルもするハイパースポーツだけだ。
モデル3、モデルYはモデルSに比べると価格が安く、ボディも小さいのだが、並みいるエンジン車を置き去りにする加速性能という特質はモデルSと同様、しっかり持っている。
ラージクラスを作り続けてきたテスラにとって、モデル3は初代「ロードスター」を除くと初めてのミッドサイズモデルだが、特質を見ると他のEVと異なるテスラ独特のものがある。