この時も「北欧出羽守」の皆様方はなんとか北欧を擁護しようと考えたかもしれないが、さすがにできなかった。散々北欧のすべてを礼賛するようなことを述べてきたものの、それを完全に覆すような人物が一人登場しただけで、「北欧では……」という礼賛論調はぶっ壊れる。

 ツイッター登場以降、特に顕著なのだが、とにかく人々はあまりにも「党派性」に拘泥し過ぎている。「とにかく安倍首相を擁護したい派vsとにかくアベはヒドい独裁者派」「とにかく韓国がやることは擁護したい派vs韓国がやることなすこと文句言いたい派」などの二項対立が存在し、両派が常に激突している。

 親北欧派と反アベ派は親和性が高いが、今回のフィンランドの件については、日本の左翼は岐路に立たされているといえるかもしれない。何しろ、昨今の左翼は、「指示待ち」になり過ぎているのだ。ツイッターのプロフィールに顕著なのだが、こんな感じの者がよくいる。

〈安倍政権に反対/沖縄に寄り添え/反原発/日韓友好/立憲民主党支持/憲法九条を守れ/オスプレイ配備反対/ヘイトスピーチを許さない〉

 別に「ヘイトスピーチを許さない原発推進派」がいてもおかしくはないところなのだが、彼らはなぜか同様イシューで一致する。ここに、「空気を読み過ぎる左翼」といった言葉を連想してしまうのだ。お仲間の活動家が賛成か反対かをしているのを見たうえで、そして、リーダー的存在による突撃ラッパに従い、敵陣営を叩くお墨付きがようやく与えられる。今回のフィンランド議会選に対し、彼らはどんなアクロバティックなフィンランド擁護をするのか注目である。

●なかがわ・じゅんいちろう/1973年生まれ。ネットで発生する諍いや珍事件をウオッチしてレポートするのが仕事。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』など

※週刊ポスト2019年5月3・10日号

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