製作終了から31年。男たちを魅了した日活ロマンポルノの女優たちはスクリーンから去った後、どんな人生を歩んだのか──。1967年にピンク映画デビューした谷ナオミ。1974年の代表作『花と蛇』の作者である団鬼六氏が絶賛した「長い黒髪と白肌、キッとにらみ返す目の強さ」に、縄が食い込む姿が映えた。
「40度の高熱があっても、私は逆さ吊りのシーンの撮影をやりましたよ。撮影で音を上げたことは一度もありません」
みうらじゅんなど熱狂的なファンを獲得したが、1979年に女優業を引退。その後は1981年に熊本市で「スナック大谷」をオープンさせた。
「全国からファンの方にいらしていただいて、楽しかったですよ。ですが33年続けたお店も2014年に閉めて、気分転換も兼ねて初めて髪をショートカットにしたんです。それからは自分の余生を楽しんでいます」
だが、2016年4月14日に起きた震度7の「熊本地震」では避難生活を強いられた。
「マンションの壁にヒビが入って、部屋に入れない。6月10日に修復が終わるまで、2か月も車の中で生活しました。今はもう部屋も、まわりの景色も元通りになっていますよ」
これからも復興のシンボルとして元気な姿であってほしい。
【プロフィール】たに・なおみ/1948年10月20日、福岡県生まれ。1967年にピンク映画でデビューし、1974年に日活に移籍。東てる美ら後進も積極的に育てた。1979年に引退し、1981年からは熊本でスナックを経営。現在はリタイア生活を送る。
取材・文■石田伸也
※週刊ポスト2019年5月3・10日号