専業主婦の間は、社会に出て稼ぐための仕事をしていない。そのことが仕事をするうえでブランク(空白)期間と見なされる。最近は採用難の影響もあり、3年くらいのブランクであれば問題視されないことも多いが、10年を超えるブランクとなると、やはり敬遠されがちな傾向を感じる。
一方で、社会には専業主婦を羨ましい存在と見る向きもある。妻が働かなくても十分な収入が得られている裕福な家庭だとか、楽をしているという印象を持つ人もいる。しかし、専業主婦となっている側にも色んな事情がある。夫婦で話し合って、稼ぐ役と家仕事を担う役を分担しているケース。育児や介護、あるいはそれらが重なるダブルケアなどで働きたくても働くことができないケースなど。
そんな専業主婦たちを、女性活躍推進の風潮が却って追い込んでしまっている面もある。しゅふJOB総合研究所が、働く主婦層のうち専業主婦経験を持つ人に向けて調査したところ、専業主婦であることに後ろめたさや罪悪感のようなものを覚えたことが「ある」「少しはある」と答えた人が合わせて56.6%に上った。
その調査のフリーコメントには、以下のような声が寄せられている。
「経済的に依存している気がして、罪悪感があった」(60代:パート/アルバイト)
「自分は何もしていないと思えて、嫌な気持ちになる」(40代:今は働いていない)
「夫に、人の稼いだ金で楽をしていると言われた」(40代:契約社員)
日々忙しく家周りの仕事に精を出し、家族のために一生懸命頑張っているのに罪悪感を覚えてしまう。主婦業に専念することが、まるで悪いことのようにさえ感じてしまう。そんな状況は、おかしいと感じる。決して女性活躍推進が間違っている訳ではなく、働きたい人も、何らかの事情で働かない選択をした人も、どちらも尊重されるべきではないだろうか。
専業主婦期間をブランクと見なす風潮は、そんな罪悪感を助長する要因の一つになっているように思う。先ほど紹介したコメントの中に、「自分は何もしていないと思えて」とあったが、専業主婦は本当に何もしていないのだろうか。そんなはずはない。
例えば、料理ひとつをとってみても、1年365日家族のために3食の料理をつくり続ける実行力、家族の好みや健康を考えて適切な料理を選定する知識、予算内で食材を調達するやりくり力などが必要とされ、日々磨かれている。
子育てや介護などから学べることも多い。また、家計を握っている主婦層は消費者の代表であり、消費者としての目線を日々鍛えている。その眼力・感覚は、マーケティング活動に必要とされる観点だ。
ブランクが、何もしていない空白期間を意味するというのであれば、専業主婦期間は絶対にブランクではない。むしろ、職場では鍛えられない別の能力を磨き、職場では得られない別の経験を積むことができる場となっている。