手術後は視界がクリアになり、よく見えるようになるというが、中には手術の効果を実感できない人もいる。
「白内障に罹患していても、視力そのものが低下していなければ、手術の効果を感じにくい。1つの目安として、メガネやコンタクトレンズをかけた矯正視力が0.7を下回っていなければ、無理に受ける必要はありません。白内障は緑内障と違い、手術を先延ばしにして症状が進んでも、手術すれば見えるようになります。日常生活に不自由を感じた時点で、手術を決めればいいのです」(加藤さん)
傷口から雑菌が入って炎症を起こすといった、手術の合併症については、あまり神経質になる必要はないようだ。加藤さんが続ける。
「100%安全な手術はないので、一時的に目の調整力が低下したり、炎症を起こしたりすることもあります。ただ、炎症から失明に至るような重篤な合併症が起きる確率は、1万人に1件以下。かなり確率が低いうえ、軽い炎症に関しても手術後は感染症を防ぐため、留意して生活していればまず心配ないでしょう」
◆緑内障
失明・視覚障害の原因第1位である緑内障は手術よりもそれに至る“前”が重要だ。
「そもそも緑内障とは、両目の視野が欠けていく病気です。一度欠けた視野は手術をしても戻らず、白内障手術のように劇的に視力が回復することもない。ただし、早期発見できれば、眼圧を下げる目薬を使って進行を食い止めることができる。初期段階では自覚症状がないので、45才前後になったら、眼科で検診を受けてほしいです」(加藤さん)
手術は、薬で進行を抑えられなくなった時のセカンドステップとして検討される。
「手術をするかどうかは、進行スピードや患者さんの年齢を考えて、医師が判断することになります」(加藤さん)
これまで、緑内障の手術は1週間以上の入院が必要とされてきたが、ここ数年で、日帰りで行える「MIGS(低侵襲緑内障手術)」と呼ばれる新しい手術法が登場した。平松さんが解説する。
「目の中の排水溝の役割をしている『線維柱帯』を切除することで、“目詰まり”を改善して眼圧を下げ、緑内障の進行を防ぐ手術法です。従来の大がかりな手術と違って10~20分程度で終わり、体への負担が少なく、入院の必要もありません。ただし、この手術はまだ新しく、対応できる病院が限られています。もし希望するならば、治療前に取り入れているかどうか病院に確認してください」
※女性セブン2019年5月30日号