パン売り場で見つけた「イーストフード・乳化剤不使用」の表示

 それにしても、なぜイーストフードと乳化剤はここまで嫌われるようになったのか。

 起源を探ってみると、今から40年ほど前の1982年に発行された『これだけは知っておきたい 危ない食品1000種』(郡司篤孝著)という本があり、一番目に採り上げていたのが「食パン」だった。当時は大気汚染などの公害が社会問題になっていた時代だったからか、表現が激烈で、大手メーカーのパンについて、〈私も、使用している食品添加物の有害性からみて『豚も食わないパン』とか『毒パン』とか、何度も書いてきた〉などという記述がある。何度も書いたそうだ。

 さらに、1999年に発行された『買ってはいけない』(週刊金曜日編集部)でも、なんと一番最初の項目は「ヤマザキのクリームパン」である。イーストフードを使ったパンは〈安全性に問題がある〉とし、イーストフードの1つである塩化アンモニウムは〈イヌに6~8g経口投与すると1時間以内に死んでしまう〉と書かれている。だが、塩化アンモニウムの半数致死量(投与されるとラットの半数が死ぬ量)は体重1kg当たり1.65gで、体重70kgの人なら115.5gとなる。クリームパン1個の重さは100g前後である。

 こうした書籍に欠けているのは「量の概念」である。水だって致死量は存在する。どんな物質でも大量に摂取すれば毒になるので、いくらでも「これは毒物だ」と書くことができる。ある一定の量を超えると毒になるから、どこまでなら安全かを研究して、かなりのマージンを取ったうえで厚生労働省が制限を設けているのである。

「微量であっても、長年の間に体内に蓄積され、がんを発症する」といった言説も見受けられるが、それこそ半世紀も前から「食品添加物でがんになる」と騒がれ、こういった書籍が“問題がある”と指摘した食品を日本人は食べ続けながら、1980年に76歳だった平均寿命は2016年には84歳にまで伸びている。そんなに危険なものなら、子供の頃から食パンだけでなく、インスタントラーメンやスナック菓子などさまざまな加工食品を食べ続けてきた50代、60代が、今バタバタ死んでいき、平均寿命が下がっていてもおかしくないが、現実は逆である。

●取材・文/清水典之(フリーライター)

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