その場合、お母さんの廃棄行為に違法性を失わせる正当な理由があるかですが、所持自体が禁止の児童ポルノの廃棄なら、あなたを守るための行為となります。一種の緊急避難的な行為で、違法性がないといえるかもしれません。
しかし、その他のお母さん側に立った反論が思いつきません。保管場所が親の家であれば、所有者のお母さんは、公序良俗に反するモノの撤去を求める権利があると思いますが、勝手に捨てるのは法の禁じた自力救済で、許されません。教育上好ましくないという理由かもしれませんが、未成年者ではないので、監護権やこれに基づく懲戒権もなく、正当化できません。以上により、あなたが賠償請求できないことはないと思います。
損害賠償を要求して相手にされなければ、裁判提起も可能ですが、訴状でタイトル名などを特定し、なおかつ、そのAVを持っていたことを証明し、そして、お母さんが捨てたことも証明しなくてはなりません。それにしても、訴状に並ぶ、いかがわしいAVタイトル名は、見物かもしれませんね。
【プロフィール】1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2019年6月21日号