セブン-イレブン・ジャパンの永松文彦社長
──当時の社長は、「日本のコンビニの生みの親」と呼ばれる鈴木敏文さん(現・株式会社セブン&アイ・ホールディングス名誉顧問)でした。
永松:鈴木さんからは特に「プル型」と「プッシュ型」のビジネスの違いを教わりました。アメリカなどで構築されたチェーンストア理論は、会社が商品を仕入れ、店舗レイアウトも全部決め、利益責任を持つという本部主導の「プッシュ型」でした。しかし日本のセブン-イレブンはフランチャイズ(以下、FC)店主導の「プル型」です。商品発注の権限は店舗にあり、商品陳列などもオーナーが決め、責任販売する。ですから、1店ごとに個性も違う。
「だからこそ各店ごとに仮説を立て、検証していくことが重要だ。それぞれの店がどうあるべきかを考えていくことが店舗経営相談員の仕事だ」と言われていました。
とりわけ印象深いのは、1982年に商品の販売情報を管理する「POSシステム」(販売時点情報管理システム)が導入されたときのことです。
「これで電卓を叩かなくても売れ筋商品がわかるようになるな」と喜んでいたら、鈴木さんからまったく逆のことを言われました。
「売れ筋を見るな。売れていない“死に筋商品”を見極めて、それを外して新規商品と入れ替えろ。売れ筋ばかり追いかけていたら、次のヒット商品を見つけることができず、将来的に縮小の一途になるぞ」と。至言でしたね。
【PROFILE】ながまつ・ふみひこ/1957年東京都生まれ。1980年、東京経済大経済学部卒業後、セブン-イレブン・ジャパン入社。人事部門を長く担当し、2014年からニッセンホールディングス副社長。2018年セブン-イレブン・ジャパン取締役、2019年副社長を経て4月より現職。
●聞き手/河野圭祐(ジャーナリスト):1963年、静岡県生まれ。経済誌編集長を経て、2018年4月よりフリーとして活動。流通、食品、ホテル、不動産など幅広く取材。
※週刊ポスト2019年7月19・26日号