国内

単純ではない冤罪事件 大崎事件に白鳥事件、松川事件など

評論家の呉智英氏

 無実なのに犯罪者とされてしまう冤罪事件は、無罪であると証明できれば、すべての謎と問題が解決するものでもないようだ。評論家の呉智英氏が、大崎事件、白鳥事件などの冤罪事件、下山事件や松川事件などの奇怪な事件を例に、冤罪事件の奥に広がる闇について考えた。

 * * *
 六月二十七日付各紙は一斉に大崎事件の再審取り消しを報じた。

 大崎事件とは、一九七九年鹿児島県大崎町で四十二歳男性の遺体が見つかった事件で、親族四人が逮捕起訴された。四人のうち三人が殺害の事実を認めたが、一人は否認したまま、全員の懲役刑が決まった。その一人が刑期満了後、再審請求をする。第三次請求で地裁・高裁が再審を認めたものの最高裁が再審を取り消したのである。

 弁護側の主張では、遺体男性は自転車ごと溝に転落し出血性ショック死したとする。司法権・警察権が国家にある以上、真相は報道またそれを情報源とする我々に完全には分からない。しかし、弁護側の主張が正しいと思う。一部でしか報道されていないが、罪を認めた三人には軽い知的障害があり、警察でのやりとりが正しく理解されておらず、言われるままに調書署名に応じたらしい。これが大きく報道されにくい理由は説明を要しまい。

 この事件以外にも、事情は異なるが、報道されにくい冤罪事件がある。一九五二年一月に札幌で起きた白鳥事件が好例だろう。札幌市警の白鳥一雄警部が拳銃で射殺され、日本共産党札幌委員会委員長ほか二名が逮捕・起訴された。当時は朝鮮戦争の最中であり、共産党は武装組織「中核自衛隊」を擁しており、犯行声明さえ出した。しかし、射撃訓練に使ったとされる証拠の銃弾の偽造が発覚するなど、警察・検察のデッチ上げが指摘され、再審請求も提出された。結果的に、委員長が懲役二十年、残る二人は執行猶予付きの懲役となる。共産党は冤罪キャンペーンを張った。

関連キーワード

関連記事

トピックス

愛子さま
【愛子さま、日赤に就職】想定を大幅に上回る熱心な仕事ぶり ほぼフルタイム出勤で皇室活動と“ダブルワーク”状態
女性セブン
テレビや新聞など、さまざまなメディアが結婚相手・真美子さんに関する特集を行っている
《水原一平ショックを乗り越え》大谷翔平を支える妻・真美子さんのモテすぎ秘話 同級生たちは「寮内の食堂でも熱視線を浴びていた」と証言 人気沸騰にもどかしさも
NEWSポストセブン
行きつけだった渋谷のクラブと若山容疑者
《那須2遺体》「まっすぐ育ってね」岡田准一からエールも「ハジけた客が多い」渋谷のクラブに首筋タトゥーで出没 元子役俳優が報酬欲しさに死体損壊の転落人生
NEWSポストセブン
嵐について「必ず5人で集まって話をします」と語った大野智
【独占激白】嵐・大野智、活動休止後初めて取材に応じた!「今年に入ってから何度も会ってますよ。招集をかけるのは翔くんかな」
女性セブン
不倫騒動や事務所からの独立で世間の話題となった広末涼子(時事通信フォト)
《「子供たちのために…」に批判の声》広末涼子、復帰するも立ちはだかる「壁」 ”完全復活”のために今からでも遅くない「記者会見」を開く必要性
NEWSポストセブン
前号で報じた「カラオケ大会で“おひねり営業”」以外にも…(写真/共同通信社)
中条きよし参院議員「金利60%で知人に1000万円」高利貸し 「出資法違反の疑い」との指摘も
NEWSポストセブン
二宮が大河初出演の可能性。「嵐だけはやめない」とも
【全文公開】二宮和也、『光る君へ』で「大河ドラマ初出演」の内幕 NHKに告げた「嵐だけは辞めない」
女性セブン
昨年ドラフト1位で広島に入団した常広羽也斗(時事通信)
《痛恨の青学卒業失敗》広島ドラ1・常広羽也斗「あと1単位で留年」今後シーズンは“野球専念”も単位修得は「秋以降に」
NEWSポストセブン
品川区で移送される若山容疑者と子役時代のプロフィル写真(HPより)
《那須焼損2遺体》大河ドラマで岡田准一と共演の若山耀人容疑者、純粋な笑顔でお茶の間を虜にした元芸能人が犯罪組織の末端となった背景
NEWSポストセブン
JR新神戸駅に着いた指定暴力団山口組の篠田建市組長(兵庫県神戸市)
【ケーキのろうそくを一息で吹き消した】六代目山口組機関紙が報じた「司忍組長82歳誕生日会」の一部始終
NEWSポストセブン
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
元工藤會幹部の伊藤明雄・受刑者の手記
【元工藤會幹部の獄中手記】「センター試験で9割」「東京外語大入学」の秀才はなぜ凶悪組織の“広報”になったのか
週刊ポスト