ライフ

洋食屋店主が撮りためた昭和の下町風景【坪内祐三氏書評】

『東京懐かし写真帖』秋山武雄・著

【書評】『東京懐かし写真帖』/秋山武雄・著/読売新聞都内版編集室編/中公新書ラクレ/1100円+税
【評者】坪内祐三(評論家)

 子供の時から毎日読んでいた読売新聞。十年ぐらい前に購読をやめたから、近所の中華(この店の冷やし中華は日本で一番おいしいと思う)で読むぐらいになってしまったが、ある時、オヤッ、という連載を見つけた。

 それがこの「東京懐かし写真館」だ(私が最初に出会ったのはこの新書本の二百八十五頁に載っている浅草のポニータワー)。週に一回(毎週水曜日)の連載だから四、五回しか出会っていないが、その内、この名前に記憶があることに気づいた。

 私は食べ物屋本を見るのが好きで(しかしそれを参考に食べ歩くことはない)、新旧取りまぜ百冊近く持っている。中でもしょっちゅう目を通している本に『東京・横浜 百年食堂』(日本出版社)がある。秋山武雄さんはその本の中で、明治三十九年創業の浅草橋の洋食屋「一新亭」の御主人として紹介されていたのだ。

 同書で、確かに、「趣味は写真」とあるが、趣味の域を越えているし、記録性に富んでいる。世田谷育ちの私に、かつての下町風景は新鮮だが、私の記憶と重なるものもある。「車擦り合うのも縁?」と題された「交通事情」。狭い通りを二台のトラックがすれ違っている。世田谷の経堂に農大通りという一方通行の道がある。私の少年時その通りは対面交通で、しかもバスが通っていた。バスがすれ違う時のあぶなさ!

関連キーワード

関連記事

トピックス

嵐について「必ず5人で集まって話をします」と語った大野智
【独占激白】嵐・大野智、活動休止後初めて取材に応じた!「今年に入ってから何度も会ってますよ。招集をかけるのは翔くんかな」
女性セブン
不倫騒動や事務所からの独立で世間の話題となった広末涼子(時事通信フォト)
《「子供たちのために…」に批判の声》広末涼子、復帰するも立ちはだかる「壁」 ”完全復活”のために今からでも遅くない「記者会見」を開く必要性
NEWSポストセブン
テレビや新聞など、さまざまなメディアが結婚相手・真美子さんに関する特集を行っている
《水原一平ショックを乗り越え》大谷翔平を支える妻・真美子さんのモテすぎ秘話 同級生たちは「寮内の食堂でも熱視線を浴びていた」と証言 人気沸騰にもどかしさも
NEWSポストセブン
前号で報じた「カラオケ大会で“おひねり営業”」以外にも…(写真/共同通信社)
中条きよし参院議員「金利60%で知人に1000万円」高利貸し 「出資法違反の疑い」との指摘も
NEWSポストセブン
SNSで「卒業」と離婚報告した、「第13回ベストマザー賞2021」政治部門を受賞した国際政治学者の三浦瑠麗さん(時事通信フォト)
三浦瑠麗氏、離婚発表なのに「卒業」「友人に」を強調し「三浦姓」を選択したとわざわざ知らせた狙い
NEWSポストセブン
昨年ドラフト1位で広島に入団した常広羽也斗(時事通信)
《痛恨の青学卒業失敗》広島ドラ1・常広羽也斗「あと1単位で留年」今後シーズンは“野球専念”も単位修得は「秋以降に」
NEWSポストセブン
二宮が大河初出演の可能性。「嵐だけはやめない」とも
【全文公開】二宮和也、『光る君へ』で「大河ドラマ初出演」の内幕 NHKに告げた「嵐だけは辞めない」
女性セブン
JR新神戸駅に着いた指定暴力団山口組の篠田建市組長(兵庫県神戸市)
【ケーキのろうそくを一息で吹き消した】六代目山口組機関紙が報じた「司忍組長82歳誕生日会」の一部始終
NEWSポストセブン
品川区で移送される若山容疑者と子役時代のプロフィル写真(HPより)
《那須焼損2遺体》大河ドラマで岡田准一と共演の若山耀人容疑者、純粋な笑顔でお茶の間を虜にした元芸能人が犯罪組織の末端となった背景
NEWSポストセブン
元工藤會幹部の伊藤明雄・受刑者の手記
【元工藤會幹部の獄中手記】「センター試験で9割」「東京外語大入学」の秀才はなぜ凶悪組織の“広報”になったのか
週刊ポスト
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
中日に移籍後、金髪にした中田翔(時事通信フォト)
中田翔、中日移籍で取り戻しつつある輝き 「常に紳士たれ」の巨人とは“水と油”だったか、立浪監督胴上げの条件は?
NEWSポストセブン