国内

世界遺産・平城宮跡を横切る鉄道はなぜ移設されないのか

平城宮跡を横切る近鉄奈良線。左奥は朱雀門。

平城宮跡を横切る近鉄奈良線。左奥は朱雀門。

 8世紀の日本の首都、奈良にあった平城京の北端にあった宮城である平城宮は、現在、国営平城宮跡歴史公園として整備と復元がすすめられている。南側の朱雀門をくぐると、まっすぐ正面に大極殿があるのだが、手前を左右に近鉄奈良線の線路が走っている。この線路の移設問題は50年以上前に提起され、世界遺産指定後に再び協議が始められた。昭和から平成、令和へと持ち越された平城宮敷地内の線路移設問題の現在について、ライターの小川裕夫氏がレポートする。

 * * *
 今年7月に開催されたG20大阪サミットで、安倍晋三首相が気の利いたジョークのつもりで発言した「大阪城にエレベーターを設置したことは大きなミス」は一部で話題になった。

 大阪城築城当時、当然ながらエレベーターという文明の利器はない。バリアフリーという概念もない。

「歴史遺産として後世に伝えるためには、当時を忠実に再現するべき」派と「現代の価値観に沿って、使いやすいように整備した方がいい」派による議論が起こった。

 これは、歴史的建造物などを保存する際に必ず直面する問題だ。それは、鉄道分野でもたびたび起きている。特に、歴史のある京都・奈良では、こうした問題があちこちで噴出する。

 奈良県奈良市の平城宮跡は、1998年に東大寺・興福寺・春日大社などとともに古都奈良の文化財として世界遺産に認定された。古刹が点在する奈良市は、従来から多くの観光客が訪れる。それでも世界遺産認定は、奈良にとって追い風になる。世界遺産登録は、奈良県や奈良市を大いに沸かせた。

 世界遺産登録の歓喜に沸く一方、課題も鮮明化した。それが、平城宮跡地を横切る近鉄奈良線の移設問題だった。

 近鉄奈良線は、前身の大阪電気軌道(大軌)が1914年に建設。その前から、線路の予定地に平城宮跡があることは判明していた。それらを考慮し、大軌は平城宮跡を避けるように線路を敷設した。そのため、大和西大寺駅から近鉄奈良駅までは線路が南へとカーブしている。

関連記事

トピックス

3つの出版社から計4冊の書籍が発売された佳子さま(時事通信フォト)
「眞子さんにメッセージを送られているのでは」佳子さま(30)のワイン系ツイードジャケットに込められた“特別な想い”《お二人の思い出の場でお召しに》
週刊ポスト
再び頂点を掴めるのか(大谷翔平/時事通信フォト)
【MLB開幕・ドジャース連覇への道のり】早々に地区優勝を決めてもポストシーズンでの“ドジャース病”を危惧する声 ワールドシリーズで立ちはだかるのは大型補強のレッドソックスか
週刊ポスト
「W復帰」の可能性も囁かれる(時事通信フォト)
《ダウンタウン“W復帰”の可能性》浜田雅功の休養が松本人志のネット復帰計画に与える影響は?「夏頃にはコンビとしてアクションを起こすのでは」との指摘
週刊ポスト
自殺教唆の疑いで逮捕された濱田淑恵容疑者(62)
【独占入手】女占い師の自殺教唆事件で亡くなった男性の長男が手記「200万円の預金通帳を取り上げられ…」「学費と生活費をストップ」、さらに「突然、親子の縁を切る」 警察に真相解明も求める
NEWSポストセブン
2023年12月に亡くなった八代亜紀さん
《前代未聞のトラブル》八代亜紀さん、発売予定の追悼アルバムの特典に“若い頃に撮影した私的な写真”が封入 重大なプライバシー侵害の可能性
女性セブン
旭琉會二代目会長の襲名盃に独占潜入した。参加者はすべて総長クラス以上の幹部たちだ(撮影/鈴木智彦。以下同)
《親子盃を交わして…》沖縄の指定暴力団・旭琉會「襲名式」に潜入 古い慣習を守る儀式の一部始終、警察キャリアも激高した沖縄ヤクザの暴力性とは
NEWSポストセブン
濱田淑恵容疑者の様々な犯罪が明るみに
《男性2人に自殺教唆》自称占い師・濱田淑恵容疑者が被害者と結んでいた“8000万円豪邸の死因贈与契約” 被害者が購入した白い豪邸の所有権が、容疑者の親族に移っていた
週刊ポスト
キルト展で三浦百恵さんの作品を見入ったことがある紀子さま(写真左/JMPA)
紀子さま、子育てが落ち着いてご自身の時間の使い方も変化 以前よりも増す“手芸熱”キルト展で三浦百恵さんの作品をじっくりと見入ったことも
女性セブン
被害者の「最上あい」こと佐藤愛里さん(左)と、高野健一容疑者の中学時代の卒業アルバム写真
〈リアルな“貢ぎ履歴”と“経済的困窮”〉「8万円弱の給与を即日引き落とし。口座残高が442円に」女性ライバー“最上あい”を刺殺した高野健一容疑者(42)の通帳記録…動機と関連か【高田馬場・刺殺】
NEWSポストセブン
ビアンカ・センソリ(カニエのインスタグラムより)
《あられもない姿でローラースケート》カニエ・ウェストの17歳年下妻が公開した新ファッション「アートである可能性も」急浮上
NEWSポストセブン
ライブ配信アプリ「ふわっち」のライバー・“最上あい”こと佐藤愛里さん(Xより)、高野健一容疑者の卒アル写真
〈50まんでおけ?〉高野容疑者が女性ライバー“最上あい”さんに「尽くした理由」、最上さんが夜の街で吐露した「シンママの本音」と「複雑な過去」【高田馬場刺殺事件】
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! マイナ免許証の恐ろしい重大リスクほか
「週刊ポスト」本日発売! マイナ免許証の恐ろしい重大リスクほか
NEWSポストセブン