ラゲッジスペースの広さも十分で実用性は高い(ホンダ・インサイト)
ドライブ後半、クルマの特性の把握度が上がるにつれて燃費も出しやすくなり、帰路は福岡の糸島から下関までの147.5km区間(28.9km/L)、兵庫・豊岡から静岡・浜松までの400.2km区間(28.2km/L)の2区間で28km/L台をマークした。
前者は福岡市の夕刻の大渋滞にドはまりしたことを勘案すると望外の数値。後者区間では舞鶴で高速道路に乗るまでは30km/Lを軽く上回っていた。車検証記載の質量1390kg、タイヤも非エコタイヤのブリヂストン「トランザER33-215/55R17」を履く中量級モデルとしては十分以上に良好な数値で、プリウスに十分対抗可能な燃費性能を持っているものと思われた。
サスペンションの能力も非常に高い。高速道路や山道など、高い性能が求められるシーンでも破綻がなく、雨で路面が濡れていたり、舗装の破損箇所が多い場所を走ったりしても常に十分な安定性を示した。車体も非常に強固で、サスペンションに大きな入力があったときの受け止めはクラス標準を大幅に上回っていた。
絶対性能ばかりではない。一時はユーザーの好みからかけ離れてしまっていたデザインも、落ち着きを取り戻しつつあるように思われた。アメリカモデルの宿命で顔やテールは依然としてビジーだが、全体を見渡すとかなりシックになった。
全幅はシビックセダンに比べて両側それぞれ10mm大きくなっただけだが、シビックセダンの痩せた印象とはかなり異なる。また、遠くから見ると全高1410mmと、現代のセダンとしては非常に低いルーフを持つことによるフォルムの流麗さもポジティブに感じられた。インテリアも一時のホンダにありがちだったデザイナーのわざとらしい“自己表現”が減り、正統的なものになった。
これだけの商品力を持っていれば、宿敵プリウスに対して互角以上の戦いを展開ができても良さそうに思えるのだが、残念ながらプリウスに大きく負けているところがある。それはトータルバランスと作り込み。要するに、クルマとしてのまとまりがいまひとつなのだ。