定年後、自宅で過ごす時間はより増えていくが、住環境によって病気や事故のリスクが高まることはあまり知られていない。特に気をつけたいのが、トイレや浴室だ。
【×=内鍵のついたトイレ 〇=「呼び出しブザー」で緊急対策】
例えば、排便時にいきむことで血圧が変動し、胸痛や吐き気などの異変が生じるケースがある。その際に、トイレの内鍵をかけていたことで家族がドアを開けられず、対応が遅れることもある。介護アドバイザーの横井孝治氏が言う。
「緊急事態に備え、要介護者がいる家庭では、『鍵をかけない』というルールを決めることが多い。ただ、鍵をかけないのは心理的に抵抗がある方もいます。そうした場合は、外側からも開錠できるタイプに替えておくといい。緊急時には、マイナスドライバーやコインで鍵を開けられます」
トイレ内で急病の兆しがあったら、いち早く家族に知らせることも大切だ。
「手が届く範囲に、大きな音が鳴る『呼び出しブザー』を置いておくべきです。3000円程度から購入できます。また、トイレや浴槽では暖房をつけていないため、リビングとの温度差で血圧が変動して『ヒートショック』を起こし、心筋梗塞や脳卒中のリスクを招きます。その対策のためにも、お風呂場にもブザーを設置したほうがよい」(横井氏)
東京都健康長寿医療センター研究所の推計によれば、入浴中のヒートショック関連の急死者は年間約1万7000人だった(2011年)。
トイレや脱衣所に暖房を設置するのがベストだが、「1000円以内で手に入る『隙間風防止テープ』をドア、窓の隙間に貼るのも効果的」(環境衛生コンサルタントの松本忠男氏)という。