「最初はサンド(砂)のグラウンドを見てビックリ。“ここグラウンドですか、これじゃラグビーはムリ、カワイソー”って思った。NZではどんな小さな村でも芝のグラウンドが当たり前で、砂のグランドなんて考えられませんでした。
練習時間が長くて同じことばかりやっていることにも驚いた。NZの練習は週2回、それぞれ1時間半くらい。それにNZのコーチはほかのクラブのコーチともコミュニケーションをとってアイデアをシェアするけど、日本のコーチは『マイチームはマイチーム』のスタンスで他のコーチにあまり教えないところも気になりました」(ナターシャさん)
現在、夫のアファさんは中部大学ラグビー部のヘッドコーチを務め、ナターシャさんも忙しい仕事の合間を縫ってクラブチームでプレイする。日本生まれの愛娘で小学6年生のメレジェーンちゃんも昔のお母さんのように男の子に混じってラグビースクールで汗を流している。
異国の地でも変わらず生活の一部であるラグビーについて、ナターシャさんはこう話す。
「私が大好きなのは、ラグビーが持っている雰囲気かな。激しいコンタクトの試合をした後でも、選手たちはハグと握手を交わします。日本の女性は『なんで?』って驚くけど、私は『それがラグビーだよ』と言います。NZ人にとって、ラグビーのチームやクラブは家族みたいなもの。ラグビーはスポーツだけど、スポーツより大きいんです」(ナターシャさん)
オールブラックスは10月26日にW杯3連覇に向けての大一番となる準決勝・イングランド戦を迎える。愚問とは知りつつワールドカップ優勝トロフィーの行方を問うと、彼女は力強くこう答えた。
「もちろん、NZが優勝すると思います。オールブラックスがいちばん強いから!」
●取材・文/池田道大(フリーライター)