さて私の本はと店内すすめばドーンと積みあげられている本の山が誰の目にも飛び込んでくる。又吉直樹の初の長編小説『人間』がいよいよ発売と盛りあげる。芥川賞を獲った『火花』そして『劇場』に次ぐ『人間』だ。たしかこれは新聞小説。
想い出した。ひと月前「本が出るので」と私の『ラジオビバリー昼ズ』にゲストで来てくれて、40分程喋って帰って行った。70をとうに過ぎた私のしゃべりの早さと頭の回転の早さに相当びっくりしたようで(まぁ又吉のしゃべりがスローモーすぎるというのもある)、その日の夜「ツイッターみたいなのにつぶやいていたよ」と何人かの知り合いに教えられた。そこに書かれていたのは文学者らしい美しいひびき。曰く『相槌を 言葉が追い越してゆく』すごい。やっぱり芥川賞作家は違う。
そうそう、もの書きといえば慶應大を出てから『TVガイド』に勤め、以来ひたすらコラム、エッセイを書き続けている泉麻人に、数十年ぶりに地下鉄ホームでバッタリ。東京人としてこの人の書く東京、昭和、テレビ、街歩き本などを信頼。駅の立ち話で泉の連載頁に登場決まり、私のラジオに出てくれてなつかしのギャグフレーズを披露しあう。いま書きおろしで1964年(東京五輪年)の事をひたすら書いているとか。もうひとつの「いだてん」楽しみだ。
■イラスト/佐野文二郎
※週刊ポスト2019年11月22日号