この犯罪を減らすには、「刑罰に加えて、治療」が欠かせない。何度逮捕されても、あるいは刑務所に収監されたとしても、やめたくてもやめられない病だからだ。彼らの、あふれ出る欲望の奥にあるのは、「女性の身体を触った。それでも、相手からは何のリアクションもなかった。これは触っていいという暗黙の合意」という「認知のゆがみ」である。
痴漢への衝動に突き動かされそうになった時、患者は「何もしないで、ただその気持ちを眺めて受け止める」訓練を受ける。それを繰り返すことで、心を「Beingモード(そのままでいる)に切り替える」ことができるようになるという。依存症患者の症例と克服の物語は、自らの心の深淵をものぞき見せてくれるのかもしれない。
※週刊ポスト2019年12月6日号