真栄平房昭は主に近世を中心に琉球史・日本史に関する多数の論考で注目される琉球大学教授で、本書は歴史コラム・時評である。おだやかな文体に導かれて読み進むうちに、海賊に脅かされながらも海を渡った琉球人留学生の体験や、江戸へ旅した琉球使節の姿があらわれてくる。
著者自身も旅する人で、中国杭州、マラッカ海峡、ポルトガル、また日本国内では鹿児島のトカラ列島や静岡、大阪などにある琉球人の痕跡をたどってゆく。さらには十七世紀、琉球にやってきた朝鮮人陶工たちの史実や、琉球の茶文化など、興味深いエピソードが紹介されている。日本史のなかに琉球史を組み入れた時、現代の課題にも通じる外交のあり方を考えさせられる。
※週刊ポスト2019年12月13日号