1960年代の東京・日暮里駅。大きな荷物を背負って電車を待つ「かつぎやさん(行商の女性)」たち(時事通信フォト)
いまや街にはコンビニやスーパーがあちこちにあり、ネットでも簡単に買い物ができるようになった。また、商店の少ない地域には買い物支援として移動販売車が巡回することもある。さらに、近年ではスマホアプリから操作するだけで、自宅まで食べ物を届けてもらえるUberEatsも登場した。
行商は形を変えて現代にも受け継がれるが、産地直送という面では古来からの行商に及ばない。間もなく、これまでの行商人はいなくなるだろう。行商列車が消えたのは自然な流れといえる。
「12月末までは行商台の所有者を探すことになりますが、仮に見つからなかった場合の対応は未定です。博物館などへ寄贈するかどうかも含めて、現段階では何も決まっていません」(同)
何気なく駅ホームに残されている行商台は、私たちの知らないところで日々の暮らしを支えてきた。行商台は、それを伝える貴重な文化財でもある。政治や経済といった大きなトピックスは歴史的にも記録されるが、当たり前のように存在していたモノやコトの保存は難しい。だが、東京の台所として一時代を築いた物流の歴史として、行商にまつわる記録は貴重なものとなるはずだ。
JR成田線・湖北駅の駅名標と行商台