こうした貼り紙がされたことから湖北駅を利用していた行商人は多かった印象を受けるが、実はそれほど多くない。統計資料などによると、同じ成田線の小林駅は一日に500人以上の行商人が利用していた。次いで、布佐駅や安食駅の数が大きい。時代によって数の上下はあるものの、一貫して湖北駅の行商人はこれらの数より少ない。なにより1964年には調査対象外として統計さえ取られることはなかった。
同年の調査では、成田線を利用する行商人は一日平均で約1750人にも及んでいる。それだけに、成田線のほかの駅にも同様の行商台が設置されている。これらの駅にある行商台は、どうなるのか?
「形状は異なりますが、成田線の小林駅や布佐駅にも行商台が設置されています。今回の措置は、あくまでも湖北駅のみになります」(同)
成田線のほか、常磐線や総武線の沿線にも行商人が多かった。駅舎やホームの改良で、こうした路線からも次々に行商台が消えていった。そして、行商そのものが人々の記憶から忘れられつつある。