「民泊禁止」の貼り紙を掲げる東京のマンション(時事通信フォト)
一方で、民泊は長らくグレー(ブラック)な状況下で存在してきた。様々な評価はあるものの、ようやく法令の交通整理が進み、既存事業者の振り分けがなされてきた。法的には宿泊業として資格を与えられたともとれるが、ある人気観光都市では住民との軋轢等から民泊に対する締め付けが連発しているらしく、まさに民泊に“宿泊業”としての資格があるのか否か試されているといってよい。
多くのホテルや旅館業者は、宿泊というゲストが身を預ける場所だけに、安全性の担保をはじめプライバシーに対する意識など、厳しい法令条件をクリアしたうえでプライドを持って運営してきた自負を語る。そうした経緯から、未だ民泊に対する懸念を持つホテル・旅館事業者が多いのも頷ける。驚愕の料金設定をする民泊に、「いかにも民泊がやりそうなことだ」という旅館経営者もいた。
地域あっての宿泊施設であり、ホテルの格はエリアの文化を表すともいえるが、“売れるなら儲けられるときに思いっきり値を吊り上げる”という宿泊施設が、果たして地域から共感を得られるか──。東京五輪を控え、観光立国邁進の裏にはリアリティのある問題が山積している。