芸能

『テセウスの船』最終回で最高視聴率を記録するであろう理由

番組公式HPより

 放送開始とともに評価を上げてきた作品がいよいよ大団円を迎える。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が考察した。

 * * *
『知らなくていいコト』そして『恋はつづくよどこまでも』と、いずれも惜しまれながら幕を閉じ、最終話の視聴率が「自己最高」を記録。有終の美を飾るケースが続いています。数字が右肩上がりということは、視聴者が期待するドラマに仕上がった証しでしょう。同時に、コロナ騒動の影響で外へ出かけられない分、いつも以上にテレビドラマに熱い視線が注がれている、と言えるのかもしれません。

 さて、いよいよ明日最終回を迎える『テセウスの船』(TBS系日曜午後9時)はどうか? ネット上ではすでに考察ブームが巻き起こっていて「音臼小事件の真犯人は誰なのか」真相究明に向けてさまざまな仮説が披露されています。この流れだと、犯人が判明する最終回に最高視聴率をたたき出すことはほぼ間違いなさそう。盛り上がりを前提としつつ、あらためてこのドラマを振り返ってみたい。その見どころ・味わいどころとは……。

●全編に張り詰めた緊張感

 第一に、「誰もが容疑者に見えてくる」その張り詰めた緊張感の持続がすごい。「あれこの人が怪しいな」と思わせたとたん、また次の疑惑の人物が浮上してきてまた次の人が……という展開の鮮やかさ。振り返れば、全話を通して弛むスキが無かったと言えそうです。

●役者の配置の見事さ

 役者たちの「配置」ぶりも見事でした。子どもから大人まで、少女からおじいさんまで。父、母、息子、娘、警官、教師、農家、記者、工場のパート、商店主……バラエティ豊か。性別も年齢も職業も立場もいろいろな人物が、まるで星座のように配置されていて、入れ代わり立ち代わり個性的キャラクターが出てくる面白さ。「村」というコミュニティのリアルさとはそういうことでしょう。

●演技力と集中力

 抜擢された役者一人一人が、持てる力を最大限発揮したことも魅力的でした。例えば主人公・心を演じる竹内涼真さんの眼は、始終潤んでいる。感情が極限まで達した臨場感がその瞳から感じられ、役になりきる集中力の凄さが伝わってくる。一方、父・佐野文吾役の鈴木亮平さんは優しくて包容力があり、どこまでも善い人を演じ切った。父と子、それぞれの持ち味をしっかりと出した二人の対置には文句の付け所がありません。

 女優たちの迫力も見逃せない。麻生祐未さん演じる木村さつきの不気味さ。榮倉奈々さん演じる母・和子のまっすぐさ。そして物語の中盤には、局面を変える力となった記者・由紀役・上野樹里さんの存在感。たった数分間の由紀の演説によって、ドラマの質が一段と濃密になった。今でもその余韻に浸ることができます。

関連記事

トピックス

エンゼルス時代、チームメートとのコミュニケーションのためポーカーに参加していたことも(写真/AFP=時事)
《水原一平容疑者「違法賭博の入り口」だったのか》大谷翔平も参加していたエンゼルス“ベンチ裏ポーカー”の実態 「大谷はビギナーズラックで勝っていた」
週刊ポスト
グラビアから女優までこなすマルチタレントとして一世を風靡した安田美沙子(本人インスタグラム)
《過去に独立トラブルの安田美沙子》前事務所ホームページから「訴訟が係属中」メッセージが3年ぶりに削除されていた【双方を直撃】
NEWSポストセブン
中条きよし氏、トラブルの真相は?(時事通信フォト)
【スクープ全文公開】中条きよし参院議員が“闇金顔負け”の年利60%の高利貸し、出資法違反の重大疑惑 直撃には「貸しましたよ。もちろん」
週刊ポスト
阿部詩は過度に着飾らず、“自分らしさ”を表現する服装が上手との見方も(本人のインスタグラムより)
柔道・阿部詩、メディア露出が増えてファッションへの意識が変化 インスタのフォロワー30万人超えで「モデルでも金」に期待
週刊ポスト
昨秋からはオーストラリアを拠点に練習を重ねてきた池江璃花子(時事通信フォト)
【パリ五輪でのメダル獲得に向けて】池江璃花子、オーストラリア生活を支える相方は元“長友佑都の専属シェフ”
週刊ポスト
店を出て並んで歩く小林(右)と小梅
【支払いは割り勘】小林薫、22才年下妻との仲良しディナー姿 「多く払った方が、家事休みね~」家事と育児は分担
女性セブン
大の里
新三役・大の里を待つ試練 元・嘉風の中村親方独立で懸念される「監視の目がなくなる問題」
NEWSポストセブン
テレビや新聞など、さまざまなメディアが結婚相手・真美子さんに関する特集を行っている
《水原一平ショックを乗り越え》大谷翔平を支える妻・真美子さんのモテすぎ秘話 同級生たちは「寮内の食堂でも熱視線を浴びていた」と証言 人気沸騰にもどかしさも
NEWSポストセブン
「特定抗争指定暴力団」に指定する標章を、山口組総本部に貼る兵庫県警の捜査員。2020年1月(時事通信フォト)
《山口組新報にみる最新ヤクザ事情》「川柳」にみる取り締まり強化への嘆き 政治をネタに「政治家の 使用者責任 何処へと」
NEWSポストセブン
愛子さま
【愛子さま、日赤に就職】想定を大幅に上回る熱心な仕事ぶり ほぼフルタイム出勤で皇室活動と“ダブルワーク”状態
女性セブン
行きつけだった渋谷のクラブと若山容疑者
《那須2遺体》「まっすぐ育ってね」岡田准一からエールも「ハジけた客が多い」渋谷のクラブに首筋タトゥーで出没 元子役俳優が報酬欲しさに死体損壊の転落人生
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 岸田自民「補助金バラ撒きリスト」入手ほか
「週刊ポスト」本日発売! 岸田自民「補助金バラ撒きリスト」入手ほか
NEWSポストセブン