作家・山口恵以子さんが最愛の母との最期の日々を綴って話題となっている『いつでも母と』にこんなシーンがある。母を自宅で看取り、悲しみのなか家族葬を執り行おうとしたところ--《母は「お葬式は家族だけで質素に」と言っていたのに》、家族葬の費用は予想を大きく上回る総額200万円弱に。《「どうしてこんなに高いのよ! 金がなかったら死ねないじゃない!」》と山口さんは憤懣やるかたない気持ちを爆発させる。
◆「家族ならでは」のとっておきの遺影を
山口さんの例のように、葬儀には想定外のお金がかかるもの。だからこそ、葬儀後に活用できる給付金制度も、見落とさないようにしよう。国民健康保険・後期高齢者医療保険に加入していた人が亡くなった場合は「葬祭費」、企業の社会保険に加入していた場合は「埋葬料」が支給される。
葬儀相談員の市川愛さんが解説する。
「葬祭費は、故人の国民健康保険を管理していた市区町村役場に、葬儀を行った日の翌日から2年以内に申請します。給付される額は1万~7万円程度と幅があるので、詳しい金額は自治体に確認を。社会保険に加入していた人がもらえる埋葬料は一律5万円。加入者の扶養家族が亡くなった場合ももらえます」
後悔しない葬儀のためには、元気なうちから遺影の準備も忘れずに。山口さんの母親は、事前に遺影を準備していた。
「遺影は母が60才のとき、インスタントカメラで“遺影用”として撮影したもの。スパンコールのドレスにラメのターバンで微笑んでいるもので、母らしい写真でした」
遺影写真は葬儀後も手元に残るものだからこそ、しっかり選びたい。家族葬を専門に行う大阪セレモニーの山田泰平さんが言う。
「結婚式と違って準備期間がないので、お亡くなりになる前から準備しておくといいですね。お気に入りのご本人の写真、思い入れがある風景写真をスマホなどに入れて持っておく。
家族葬は親しい人しか参列しないので、どんな写真でもいい。お酒が好きだったからと一升瓶を抱いている写真にするかたや、働いていた商店の背景と合成するかたもいらっしゃいますよ」
※女性セブン2020年4月30日号