「労組に苦情を申し立ててくるのは在宅勤務の社員が多いというのが実感です。『マスクを提供しろ』『自宅にプリンターを買ったから補助金を出せ』といった要求が日に日に増えています。在宅勤務でも残業代がつくようになったのですが、残業を認められるためのハードルが高く、在宅の社員のほうが給料への不安が蓄積しています」
電子機器メーカー勤務の男性(30代)が語る。
「上司は『リモートで指示する』と言って、在宅勤務に入りながら何もしない。20代の若手は『僕もテレワークでいいですよね?』と言い、こちらも立場上ダメとは言えない。結局、中間管理職の我々が出社しないとどうにもならなくなった。出社組の間で『高給取りの上司ほど不要不急だ』と愚痴を言い合っています」
こうした不満の矛先は社内に留まらない。取引先が在宅勤務になってしまい、自分の仕事に影響が及ぶこともあるからだ。この電子機器メーカー社員が続ける。
「取引先の広告代理店は早くから在宅勤務に切り替えていて、弊社幹部が参加する会議も『いま御社に行くとまずいのでどこか会議室を借りたい』と言ってきた。先方に合わせて電話での打ち合わせばかりになって納期は遅れるし、ミスが起きても『こういう状況ですから』とコロナのせいにしてミスを認めない風潮になってきました」
新型コロナの猛威は、働く人々の心にも“分断”を生んでいた。
※週刊ポスト2020年5月1日号