西川氏に限らず、日産全体が会社を立て直すためにゴーン氏にアグリーだったのです。ところが、徐々にみな自分のことしか頭になくなってしまう。ゴーン氏は「日産を立て直した私が多額の報酬を得て何が悪い」となり、他の経営幹部はそれに嫉妬し、自分ももっと欲しいとなる。その上で起きた追放劇だったということでしょう。
思想家の内田樹さんが『サル化する世界』という本を書きましたが、ゴーン事件というのは、“サル化”した経営者が、同じく“サル化”した社員に追い出されたということだったんじゃないか。今さえよければいい、自分さえよければいいというサル化が事件の本質だったと、本書を読んで思いました。
●江上剛(えがみ・ごう)/1954年、兵庫県生まれ。旧第一勧業銀行(現みずほ銀行)に入行。 1997年「総会屋利益供与事件」で広報部次長として尽力。その後、作家に転身。
※週刊ポスト2020年5月1日号