休業要請に応じなかったパチンコ店の店舗名を公表する大阪府の吉村洋文知事(時事通信フォト)
「1店舗当たりで月の売り上げはどんなに少なく見積もっても1億以上、そこから地代、人件費、光熱費や遊戯台のレンタル代、改装費などの施設維持費が差し引かれます。とにかく動くお金の額が大きい。今言われているような休業補償、30万とか100万とか言われても、何の足しにもならないんです。我々としてもそこまで面倒を見てくれ、などとは言えませんが、大手を除けば財政的に厳しいというのが我々の本音。今やめて死ぬか、少しでも蓄え、現金を残しておいて数ヶ月後、1年後に死ぬか。そんな判断を迫られているんです」(前出・パチンコ店勤務の斎藤さん)
1000万、億単位の自転車操業でまわすのがパチンコホール経営の実態だから、営業してペダルを漕ぎ続けなければ巨大な負債だけが残されるから続けているのだ、というのが本音のようだ。誰も好きでやっているわけではない、というのはスタッフも経営陣も同じらしいが、どんな業種でも、どんな店でも、自粛や休業に移行しているのも事実。だから、本当に「非常事態」を意識しているのかも疑わしい、勝手な都合で営業しているのではないか、側から見るとそんな印象だ。
「パチンコ、スロット業界が、複雑な利権構造の元にやってきたのは事実。雇用の拡大など良い側面もあれば、負の面もあって、清濁併せ呑んで運営されてきたのです。コロナ騒動によって、世界中で意識改革が拡がっていることを考えると、我々の業界も今までと同じ意識でやっていては、もはや誰からも相手にされない。今改めて、我々の存在意義をかみしめています」(同前)
業界自体への批判が殺到するのは、従来からの業界に対するイメージ自体が影響していることは否定できない。負の面を数え上げればきりがない。一方で、娯楽産業が社会に様々な形で貢献してきた面もあるだろう。なにより、そこで多くの人が働いている事実がある。そう言った人々に、補償が十分ではない状態で「今すぐやめろ」と攻撃し、晒し上げることは果たして正義なのか。社会の価値観が大きく変わりそうな今、一定の寛容さを失い、真っ白に漂白されたものだけを求めるのであれば、新しい世界はより窮屈なものになってしまわないのか、一抹の不安がよぎる。