肉体の老いと向き合うことで、あらたな能力を発見するのが、長寿アスリートたちの醍醐味でもある。マスターズ空手大会で常に上位入賞の75歳の好々爺は、「若い頃は、勝たなきゃ意味ないと思っていたんですが、歳を重ねると『闘える』『闘えた』こと自体によろこびを感じるんです。だから負けても握手ができる」。
この御年で現役選手というギャップに、運動の苦手な著者は興味津々でインタビューにのぞみ、「その晴れやかな語り口に、『俺もやってみようかな』とつられることがしばしば」だったという。陸上、水泳、球技、ボート、クライミングなどの奥深さを語る「人生の熟練者」の飾らない言葉は、「一発勝負ではなく一生勝負」のスポーツの原点を教えてくれる。
※週刊ポスト2020年5月22・29日号