「小番頭が点呼を取ると、丁稚たちが『いち』『に』と続いた後に、大村崑が『みっつ』とズレた返事をして、小番頭にバケツをかぶされて叩かれるんです。バケツを外して5秒以上経ってからやっと『あ、痛っ』と反応する(笑い)。丁稚の小ボケと番頭のツッコミの掛け合いが可笑しかった。
いつも最後には女将さんから『こら番頭、丁稚に謝れ』と言われて、番頭が『俺が悪かったよ』と謝り、丁稚たちがバンザイする。お決まりのパターン、毎週同じくだりなのにムチャクチャ笑えました」(大阪府在住の元会社役員・76)
ただし、出演者には生放送ならではの苦労があった。大村崑氏(88)が振り返る。
「生放送なのにアドリブばかりで大変でした。僕は小ボケの丁稚役で、叩かれてから5秒で『痛っ』と言うところを、アドリブで10秒に延ばしていた。
だから時間が押して押して仕方なかった(笑い)。その調整をするのが小番頭(芦屋雁之助)でしたが、丁稚のセリフをとばして次のセリフを言ってしまうこともあった。生放送なので、とにかく時間内に最後のオチまで終わらせないといけない。毎回ヒヤヒヤしました」
同作は映画化されたのち、1965~1967年には大村崑、花紀京、頭師佳孝トリオの『いとはんと丁稚どん』、1975~1983年には木村進、内場勝則、間寛平、坂田利夫らによる『あっちこっち丁稚』などとリバイバルされ、時代を超えて愛された。
※週刊ポスト2020年6月5日号