「私に言わせればギャグじゃないですよ。『はやり言葉』なんです。ですから、ぼんぼん捨てていくことができました。

 今は一つ当てたらギャンギャンやって飽きられて、もう次の人が出てきてしまう。でも、ああいうのもギャグではないです。ただの受け狙い。そういうのは、すぐに捨てるからいいわけで、固執するものではないです。

 じゃあ、ギャグってどういうものかと言いますとね。

 例えば西部劇で蒸気機関車が出てくる。その機関車は馬でも追いつくくらいのスピードしか出ていない。そこに主人公が十人くらいの悪漢に追われて逃げてくる。主人公は走ってきた機関車に飛び移る。

 馬で追ってくる悪漢どもは、凄い青龍刀を持っている。悪漢も飛び移り、走っている機関車の屋根の上で格闘になって、青龍刀で襲い掛かられたところをかわす。で。青龍刀が屋根に当たる。火花が散る。というのを何度かしているうちに、青龍刀の刃がボロボロになっちゃった。

 すると悪漢は連結のところに行って車輪に刃を当てる。すると、刃が研がれて磨かれるんだ。で、『これでよし』となってまた襲い掛かる。ここまでやるのが、ギャグだと思うんです」

●かすが・たいち/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『鬼才 五社英雄の生涯』(ともに文藝春秋)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社)など。本連載をまとめた『すべての道は役者に通ず』(小学館)が発売中。

■撮影/片野田斉

※週刊ポスト2020年6月5日号

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