「給付金対応に追われ、1日12時間以上働くこともしばしばです。毎日住民のかたに怒鳴られ、新卒の女性公務員は、窓口から見えないところで隠れて泣きながら、懸命に仕事をしています」(都内区役所の関係者)
片田さんは、こうした人は経済的な不安が強いと分析する。
「コロナの影響で困窮していれば、とにかく早くお金が欲しいと思うようになる。さらに市役所の窓口業務をする公務員を“税金で安定した収入を得ているんだろう”と決めつけ、羨望の気持ちを持っていることも多い」
羨望とは、他人の幸せをがまんできない怒りのことです。収入が激減して困窮した人ほど、減給がなく恵まれた職業に見える公務員への羨望は強くなる。その結果、窓口での差別的な言動が生じるのです」
「命」と「経済」のどちらを優先するかは、コロナ対策を進めるうえでの分岐点といわれる。どちらの不安が大きいかで、人々が怒りを向ける先まで変わるようだ。
さらに片田さんは「想像力の欠如と無知が目立つ」と指摘する。
「差別的な言動をする人に共通するのは、“自分の行為がどれほど相手の怒りや悲しみ、反感を買うか”という想像力が欠如していることです。ワイドショーなどにあおられて不安でいっぱいになり、正確な情報を仕入れる余裕も、冷静に判断する姿勢もありません。日頃は落ち着いている人でも、今回のような緊急事態では暴力的になるケースもみられます。皮肉にも、新型コロナが人々の本性を暴く“リトマス試験紙”になっているのです」
巷では外出自粛や休業要請に応じない人を吊るし上げる「自粛警察」も登場。ある駄菓子屋は、営業を自粛していたにもかかわらず、店先に〈コドモアツメルナ オミセシメロ マスクノムダ〉と赤い字で書かれた“脅迫文“まがいのものが貼られていたという報道もあった。
こうした行為も、強い不安と想像力の欠如がもたらしているのだ。
※女性セブン2020年6月18日号