池波正太郎氏についても語る土橋章宏氏
本木:もちろん、そのあたりは十分に調べてから撮影に臨みます。ただ、例えば座布団が一般に普及するのは、本当は明治以降だとわかっていても、上下関係を表す画作りのためにあった方が自然であれば、ある程度は目をつぶってしまうこともありますね。あと、その時代にふさわしい言葉遣いというのも大切ですが、そこは土橋さんが詳しいので楽をさせてもらっています。
土橋:私は池波正太郎さんの大ファンなので、江戸時代の会話や雰囲気は染み付いているのかもしれません。今回の作品に限りませんが、グルメ要素を多めにしているのも、実は池波さんの影響なんです。グルメもまた、サスペンスと同じくらい、視聴者を飽きさせない重要な題材だと思います。
本木:たしかに、これほどグルメ番組が多いのは日本だけかもしれない。とくに最近はコロナ禍による巣ごもり生活で、テレビだけじゃなくSNS上にもレシピやお取り寄せグルメの情報が山ほど流れてきますし。
土橋:興味を持つと、とことん凝るのも日本人の特徴なんでしょう。
【PROFILE】
土橋章宏(どばし・あきひろ)/作家・脚本家。1969年、大阪府生まれ。関西大学工学部卒。2011年「超高速!参勤交代」で第37回城戸賞受賞。2013年に小説『超高速!参勤交代』で作家デビュー。2014年公開の同名映画で第38回日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞。著書には映像化作品多数。
本木克英(もとき・かつひで)/映画監督。1963年、富山県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。松竹に入社後、1998年に監督デビュー作『てなもんや商社』で第18回藤本賞新人賞受賞。2014年『超高速!参勤交代』、2018年『空飛ぶタイヤ』で日本アカデミー賞優秀監督賞受賞。2017年よりフリー。
●取材・構成/友清 哲
※週刊ポスト2020年6月12・19日号