さらにこんな動きもある。緊急事態宣言の解除後、郊外の中古一戸建てが売れ始めた。3000万円未満の低価格帯の動きが早まり出したのだ。少し駅から離れた築30年程度の物件は、土地の価格だけになるので1000万円前後の予算でも十分に探せる。
東京で売れ出したミニ戸建てはファミリーユースだろうが、郊外の築古物件に果たして家族全員で移り住んでいるのか、あるいはテレワークの場所として買われているのかは、今のところよく分からない。
だが、今後、首都圏の住宅市場で起こりそうな“コロナ現象”を考えてみると、明るい材料を探すほうが難しい。
まず、「タワマン離れ」が本格化するかもしれない。コロナはタワマンの持つ脆弱性を浮き上がらせてしまったのだ。タワマンの中層階以上に住むとエレベーターを利用せざるを得ない。ところが、エレベーターには“三密”の条件が揃っている。
タワマンによっても違うだろうが、「1ユニットに5人まで」というルールを作った管理組合が多い。これにより、最上階付近に住む人の外出にはさほど影響しないだろうが、途中階に居住する人はエレベーターに「30分待ち」などという現象も起こっているようだ。夕方以降は1階エントランスでエレベーター前に長蛇の列ができるタワマンもあるらしい。
また、隣戸生活音が漏れ聞こえる程度に戸境壁が薄いのもタワマンの特徴。みんなテレワークで住戸内にいるので、どうしても隣戸からの音が気になり、日常生活やテレワークに苦痛を感じている人もいると聞く。
タワマンから戸建てへ──。今後そんな動きは小さなトレンドを作るかもしれないが、もっともタワマン人気が萎んでしまう可能性があるのは、湾岸エリアだ。
2021年に延期五輪が開催されたら、その心配は杞憂に終わるかもしれない。しかし、開催されずに中止となった場合は……想像するのも恐ろしい事態だ。湾岸は、ある意味「呪われた場所」のように捉えられるだろう。私の世代は台場エリアで1996年に開催されるはずだった「世界都市博覧会」が中止になったことを覚えている。不運が重なる土地のイメージがますます強まる。