ユネスコ世界遺産の諮問機関であるイコモス(国際記念物遺跡会議)は韓国サイドの主張を受け入れる形で、日本に「歴史全体について理解できる説明戦略」を求め、センターはそうした勧告を受け入れる形で発足した経緯があった。
「正直に言うと私も最初は韓国側の主張を『そんなばかな』と思いつつも、ひょっとしたら何かあったんじゃないかと心の片隅で思っていました。第二次大戦中で過酷な環境であったことは間違いないし、戦争映画等を見てもパワハラは日常茶飯事に思えた。
ところが資料収集していく過程で、端島炭鉱で働かれていた松本栄さん(91)という方がいることを知りお会いした。そのとき『故郷が汚された。日本の外交姿勢はけしからん!』と凄く怒られたのです。そこで韓国側のチラシや軍艦島について書かれた日本の出版物をお渡しし、『どこがおかしいかカメラの前で証言してください』とお願いしたのがスタートです。松本さんは『朝鮮の人も日本人も(当時は)同じ日本人ですから。差別はないですよ』と語られ、具体的な中身についての誤りや矛盾を詳細に指摘された。私は彼らの証言を聞いているうちに『軍艦島は地獄島』という言説は全くの妄想だと確信を持つようになったのです」
◆「気に入らない証言」
松本氏との出会いをきっかけに島民の輪が広がり、加藤氏はこれまで70名を超える元島民の証言を聞いてきたという。センターでもその一部が公開されている。中でも注目を集めたのが、在日二世の鈴木文雄さん(故人)の映像インタビューだ。鈴木さんは幼少期を軍艦島で過ごし、父親は炭鉱現場の「伍長」として管理職を務めていた。