「留年とかカルトへの入信とか、いろんな事件が起きるのが大学です。最近は友達が作れない子もいるから、交友の場を合宿で用意してあげるのもサービスです。これも全ては、この大学に来て本当によかったと思ってほしくてやっています。

 偏差値だけで安易に進路を決めるなとか、時間がかかってでもしっかり基礎学力をつけるべきだなんて、私の時代は誰も言ってくれなかった。だから今の子には、言ってあげたいんです」

 自分が受けた恩や、受け得なかった恩も次代に返す。そんな思いの連関が、今後も教育の歴史を紡ぐと信じたい。

【プロフィール】さいとう・きょういち/1953年埼玉県生まれ。早稲田大学理工学部応用化学科卒、東京大学大学院工学系研究科化学工学専攻修了。東大助教授を経て千葉大学工学部教授。現在同名誉教授。早大理工学術院客員教授の傍ら(株)環境浄化研究所で研究開発に取り組む。「私は企業との共同開発もかなりやってきました。学問は社会に役立ててこそ意味があるというのが恩師の教えでもあるので」。著書は他に『道具としての微分方程式 偏微分編』『グラフト重合による吸着材開発の物語』等。165cm、70kg、A型。

構成■橋本紀子 撮影■国府田利光

※週刊ポスト2020年7月24日号

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