「おかしな話ですよ。私はよりよく教えるためによりよく研究し、その逆も然りだと言ってるだけなんですけどね。研究するだけなら大学じゃなく、研究所でいいんですから。
院生だけを採る組織なら、研究至上主義でいい。でも私が教えてきたのは4年で大学を卒業する子や修士2年で企業に入る子が大多数。将来を考えて学問的な体力や素養をつけてあげないと、社会でやっていけないじゃないですか? それに社会からもイイ学生を育ててくれって期待されてると思うんですよ、大学が大学を名乗る以上は!」
〈大学には答えのない最高の問題がある〉、〈理系こそ国語と英語〉等々、常識をいい意味で裏切る斎藤氏の新常識が、一部の高校生や浪人生に的確に響く光景は、見ていて頼もしい限りだ。
「イイ学生は素直なんです。例えば私の化学英語の講義の原型は早大生時代に受けた工業英語にあります。必修ではないものの受けてみたら、受験英語やTOEICとも全然違う、理系の論文作成や理解に役立ちそうな英語で、実際、役に立ったんです。
だからそれを学生にも教えてあげなくてはと思ったのですが、面倒で誰もやりたがらない。だからまた言い出しっぺの私がやることになり……。留学もしたことがない私が、今じゃ日本工業英語協会会長ですよ(笑い)。そんなふうに若い頃から恩師の影響をモロに受けてきたので、人は素直なほど伸びると、私が証明しているようなものです(笑い)」
専門外の化学英語を教え、新入生合宿の引率にも全力で臨む〈ベストティーチャー賞〉受賞者でもある著者は、講義中に繰り出すダジャレも含め、全てはサービスだと言う。