男女10人ずつを「一夫一妻」と「一夫多妻」でそれぞれマッチングさせるとどうなる?
「全体的には」といったのは、一夫多妻だと不利になる女がいるからです。それは大きな資源のある男を結婚した女で、別掲の図を見れば明らかなように、最上位の女は一夫一妻だと自分一人ですべての資源を独占できますが、一夫多妻だとそれを4人で分割しなくてはならなくなります。
このように一夫一妻は、非モテの男と、結婚した女に有利な制度です。こうしてアメリカでは、「インセル(非自発的禁欲者)」と呼ばれるミソジニー(女嫌い)の非モテ男と、家庭をもつ保守的なフェミニストが、ともに「一夫一妻の伝統的な道徳を守れ」と主張する奇妙なことが起こるのです。
これは拙著『上級国民/下級国民』でも指摘しましたが、現代社会は徐々に「事実上の一夫多妻」に移行しつつあります。50歳時点でいちども結婚したことのない割合が生涯(50歳時)未婚率ですが、日本では男性23.4%に対して女性14.1%(2015年)とかなりの差があります。男女の数がほぼ同数だとするならば、一部の男が複数の女と結婚しているのです。
こうした傾向は欧米でも同じで、だからこそ男の「モテ/非モテ」が深刻な問題になっています。今後、家族の形態が多様化し自由恋愛がさらに進むにつれて、この「モテ格差」はさらに大きなものになっていくでしょう。
◆橘玲(たちばな・あきら):1959年生まれ。作家。『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎文庫)、『言ってはいけない 残酷すぎる真実』(新潮新書)、『上級国民/下級国民』(小学館新書)などベストセラー多数。新刊『女と男 なぜわかりあえないのか』(文春新書)が話題。