コロナ禍の中で、テレビ界では多くの番組が収録、放送を再開している。そんななかで、春にスタート予定が、7月まで初回放送がなく取り残されていた番組が2つあった。大苦戦を続ける2番組についてコラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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7月の終わりとともにようやく放送延期されていた春ドラマが出そろい、「名作の再放送が好評だった」という追い風を受けて軒並み好スタートを切りました。一方、今春スタートのバラエティは、撮影やキャスティングなどの制限を受けながらも4月からスタートしていて、『有吉の壁』(日本テレビ系)のように早くも成功を収めている番組もあります。
しかし、実は7月まで初回の放送がなく、取り残された状態になっていた新番組がありました。それは『有田プレビュールーム』(TBS系、月曜19時)と『これって私だけ?』(ABC・テレビ朝日系、火曜20時)の2本。7月に入って3か月遅れでようやくスタートを切り、まもなく1か月が過ぎようとしていますが、すでに「危険水域」と言われるほどの大苦戦を強いられているのです。
世帯視聴率を見ると、『有田プレビュールーム』は7月6日の初回2時間SPが3.9%、13日が4.0%、27日が3.7%。『これって私だけ?』は7月7日の初回3時間SPが5.6%、21日の2時間SPが5.8%。ともに前後の番組と比べても低いこともあり、スタート早々に危機が叫ばれているのです。
両番組はなぜここまで低調なのでしょうか? また、どんな打開策が考えられるのでしょうか?
◆「ご祝儀視聴」されなかった理由
新番組の強みは、既存番組にはないフレッシュさ。テレビ番組に限らず新商品が発売されると気になり、「ちょっと試してみようかな」という気持ちになるように、新番組は「一度は見てみよう」という傾向があります。実際ドラマは第1話が最も世帯視聴率を獲得していて、新番組スタートの「ご祝儀視聴」などとも呼ばれますが、両番組はそのメリットを受けられませんでした。
その初回のご祝儀視聴を得られなかった理由は至ってシンプルで、「新番組らしいフレッシュさを感じさせられなかった」から。
まず『有田プレビュールーム』のコンセプトは、「芸能人が熱のこもったVTRを持ち寄り、プレゼンしてシリーズ化を目指す」というもの。ここまでは「史上最強アイドルの魅力(アグネス・チャン)」「テレビで見たことがない猫動画」「(藤田)ニコル監督の美女激撮」「ラーメン通がはまる名店」「超節約ケチケチメソッド」「究極のスイーツ作り」「木村拓哉の名シーンを完コピ再現」など、さまざまな企画をランダムに放送しています。
次に『これって私だけ?』のコンセプトは、「みなさんが密かに思う『これって私だけ?』という些細な疑問を全力調査」というもの。ここまでは「『シェフ呼んでもらえますか?』の客が見たい」「コンビニで働く外国人って超優秀。実はエリートで実家がお金持ち?」「スゴい長距離を運転する人って何のため?」「人ん家の風呂を見てみたい」「蒙古タンメン中本はまかないも激辛?」「ミシュランシェフが本気でキャラ弁を作ったらどんなものができる?」など、こちらもさまざまな企画をランダムに放送しています。
どちらも1つ1つのVTRは力の入ったものでありながら、既存番組と似た企画が混じっているためか、残念ながらフレッシュな印象はありません。似た企画で質がそれほど変わらなければ、「愛着のあるほうを選ぶ」のが人の心。後発なら、「この番組はここが違う」という名刺代わりの企画を大々的に打ち出したほうが初回放送を見てもらえたのではないでしょうか。
◆一刻でも早くヒット企画と名物キャラを